ぶみ

さよなら ほやマンのぶみのネタバレレビュー・内容・結末

さよなら ほやマン(2023年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

家族の絆は鎖だろうか?

庄司輝秋監督、脚本、アフロ主演によるドラマ。
島で夏の間、ほやを獲ることを生業とし、船に乗ることができない弟と二人暮らしをする主人公と、島に突如現れ、ともに暮らすこととなる漫画家の姿を描く。
主人公となる漁師・アキラをラップグループMOROHAのMCアフロ、弟のシゲルを黒崎煌代、都会からやってきた漫画家の美晴を呉城久美が演じているほか、松金よね子、津田寛治等が登場。
物語は、宮城県石巻市の沖にある島を舞台とし、震災により今もなお行方不明の両親を案じながら、借金を抱え、毎日カップラーメンで食事を済ます兄弟と、そこへ、1000万円で家を売って欲しいとして突如現れた漫画家との島での奇妙な共同生活が中心となるが、冒頭、本作品の要所要所で登場するほやの説明がなされるのは良いところであり、恥ずかしながら、ほやが貝ではないことを初めて知った次第。
主演となるアフロについても、そもそもMOROHAなるグループを知らなかったので初見となったのだが、演技の熱量は伝わってくるものの、主演を務めるには少々荷が重かったかなというのが正直なところで、これは黒崎にも言えることであり、序盤にあるYouTuberを目指すシーンなら素人感が出ていてピッタリなのだが、シリアスな展開となる終盤になるにつれ、そのテンションが空回りしていたのは否めない。
ただ、呉城の自然な演技や、松金や津田といったベテラン勢が、そこをしっかりとカバーしていたのは作品としてまとまりがあり、良かったところであり、特に松金は、その立ち振る舞いといい、放つ台詞といい、影の立役者と言っても過言ではない。
前述のように、終盤に向かうにつれ、徐々にシリアスさが増してくるのだが、肝心なところで、アニメーションが挿入されたのは、効果的でも何でもなく、私的には真っ向勝負から、ただ逃げたとしか思えなかったため、非常に残念であり、以前観た北村龍平監督『天間荘の三姉妹』のようなファンタジーならいざ知らず、是非実写で乗り切って欲しかったもの。
不動産契約の何気ない長回しのシーンを筆頭に、随所に見どころはあるものの、演技、演出とも、もうひと頑張りが必要であるため、今後に期待したいとともに、やはりこういった作品には、しっかりと影で支えるベテラン陣が必須だなと感じた一作。

行け、アキラ。
ぶみ

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