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さよなら ほやマンのハルのレビュー・感想・評価

さよなら ほやマン(2023年製作の映画)
3.8
予告の質感から『サバカン』的な雰囲気を感じ取り、密かに期待していた作品。
結論から話すと後半の失速がなければ…色々と“惜しい”一作。
ただ、マイナーながら演出の巧みさと抜群のキャラ設定で観客を引き込む力は確かだった。

田舎で二人暮らしをしてる貧乏兄弟。
そこへトラブルを起こし都落ちした女性漫画家がやってくるところから物語はスタートする。
ちなみに演者は誰も知らないが、みなインパクトがあるので不思議と馴染む。
頭金50万を渡され「1000万でこの家を売ってくれ!」と言われて悩む長男。
「家は売らんが、お金を運用して増やすんや!!」で頭金を使い込み、YouTuber『ほやマン』を創作する。
ギャンブラーにも程がある…それだけ切羽詰まっているとも言えるけど。
ちなみにほやマンは自作の被り物をして弟とふざけているだけのキャラクター(笑)

しかし、人気女性漫画家の隠れたアシストもあってこれがプチバズリ→ちょっと有名になった途端に誹謗中傷でメンタルぼこぼこ。
このムーブは“出る杭は打たれる”という、つまらない現実を反映しているなぁと考えさせられた。
だれかの足を引っ張ることでしか自分の存在を確かめられない哀れな人達…悲しいものだね。

現実感のある話に熱量のこもった会話劇、涙あり笑いありの人情全振りストーリーが持ち味の一作。
不要に思える気持ちの悪い映像が終盤で組み込まれたり、無理やり後から付け足したようなエピソードがクドく感じたり、決して洗練された作品ではない。
しかし、真っ直ぐな感情と想いをぶつけ合える関係性に胸が熱くなった。
加えて、美しい海と田舎ならではの壮大な景色がマイナスイオンとして癒やしを届けてくれる。

結局、人を救えるのは人。
過去の自分を乗り越えるには自分自身の挫けぬ意思しかない事を改めて痛感。
期待値を超えはしなかったけど、及第点。
邦画の良さと田舎の尊さを存分に感じられる心優しき映画でした。
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