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さよなら ほやマンのpersimmon1aのレビュー・感想・評価

さよなら ほやマン(2023年製作の映画)
5.0
昨年舞台となった島に旅行した知人に誘われて久しぶりに映画館へ。

役者さん全員が良かった。アフロさんという主役の方、津田寛治さんの日焼け具合がビーチで焼いたような感じではなくて、まさに太陽の下で仕事する人の日焼けのそれで、ちゃんと役作りできてるなあ、とまず初見で好感触を持って見始めた。

1,000万円持って突然現れたガサツな漫画家女には最初イライラしてたし、そもそもいきなり家買いたいとか、んなことあるかよ!と思ったけど、話に入り込んでいって次第に気にならなくなった。

カップラーメンばっかり食べている理由を知ったとき、震災を直で体験してない自分に改めて気付かされた。監督のトークでも、海のものを食べられないって感覚はあの当時、普通にあの辺の人らにはあったという。一方で、その海のものを生活の生業にしてきた、していかなくてはいけないというジレンマがあった、と。当事者だったら想像するだけでメンタルやられそう。
その海のものを弟が兄との掟を破って食べてしまっているのをのぞき見で知るシーンは、元の脚本では濡れ場だったとアフタートークで知り、これでなくてほんと良かった。一発でげんなりしてたはず。あるいは美晴とアキラがデキたりとかの話だったうんざりだったから。あー、ハイハイって。

自分は基本、震災ものって見ない。当事者に心を寄せない、現実を見ないとかということではなくて、映画を人が作り出す表現作品として捉えたとき、結局一つのナラティブにしかなり得ないと思うから。図らずもこれは震災ものだったけど、他の要素が良かったので、許容できた。

松金さんのシーンで「この島に生まれてよかったと思ってる?」と聞かれて、ちょっと忘れたけど「いいと思うようにしてる。ババアだって悩んでるのよ!」ってのが世代的に自分にはズシリときた。一生出自を受け入れがたかったり、判断にこれでいいのかとか悩むものなんだよな。

今回が当たりだったからってのは大きいけど、たまには知らない映画を何の下調べもなく見るのも良いなと思えた。
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