パゾ

突入せよ!「あさま山荘」事件のパゾのネタバレレビュー・内容・結末

4.8

このレビューはネタバレを含みます

警察と連合赤軍が最後に大規模にかち合ったあさま山荘事件を取り扱った作品です。

「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」が連合赤軍側の視点で山岳ベース事件前後からあさま山荘事件までを描いているのに対し、こちらは完全に警察側の視点であさま山荘事件のみが描かれており、ちょうど「硫黄島からの手紙」と「父親たちの星条旗」の様な表裏一体の関係になっています(実際に本作で描かれた視点が警察側のみのものである事から「実録・連合赤軍」は作られたそうです)。

(実際にあった事件なので当然と言えば当然ですが)組織の意思決定の流れ、指揮系統を統一する重要性、組織マネージメントの難しさ、現場と中央の温度差、地方組と中央組の主導権争いなど、組織で働いていれば誰もが一度はどれかを経験するであろう要素が全て出てくるので、会社勤めの人には是非観て欲しいなと思います。

ただ、本作において、警察は何故最後まで犯人を射殺しなかったのか、犯人達はどういう経緯や理由でこの事件を起こしたのか、犯人達は何故最後まであさま山荘管理人の妻を殺害しなかったのかなどについてはほぼ語られる事は無く、背景知識ゼロで本作だけ観ると「よく分からんテロリストvs無能な警察」みたいな浅い話に着地してしまう危険性もある作品だなと思いました(連合赤軍側の考えをつぶさに解説してそれに共感する人が生まれてしまう可能性を考慮した結果かとも思いますが)。

「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」とセットで観て初めて連合赤軍やあさま山荘事件という歴史的な事象への視点を得られるタイプの作品ではありますが、名作だと思います。
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