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映画監督とは何かのnetfilmsのレビュー・感想・評価

映画監督とは何か(2008年製作の映画)
3.8
 映画監督・吉田喜重は生前、「私は映画監督になりたくてなった人間ではない。戦後の苦しい時代に家庭のために仕事を探していて、いわば偶然に映画という仕事を与えられた。だから『映画とは何か』『監督とは何か』ということを初めから考えざるを得なかった」と語った。福井県に生まれた彼は生まれて間もなく福井大空襲に遭い、家を焼かれた。然しながら戦争の末期状態の只中で辛くも生き延びた原体験がのちの映画監督としてのキャリアに結実する。今作は吉田喜重本人の体験談や彼を敬愛して止まない青山真治や、吉田喜重研究の第一人者である蓮實重彦の言葉を通して、吉田喜重の映画に言及する。青山真治は吉田喜重の映画には一貫してニヒリズムが漂うと言い。『EUREKA』の時には特に吉田のニヒリズムや反メロドラマが念頭にあったという。オリジナル脚本にこだわりを見せた吉田に対し、岡田茉莉子が藤原審爾の小説を原作とした『秋津温泉』のオファーをしたものの一度は断られ、それでも粘り強くお願いしたら受けてくれたことを語る岡田茉莉子の表情。黄色の落ち葉に彩られた神宮外苑を夫婦で歩く吉田喜重と岡田茉莉子の姿を永遠に刻み込みたい。蓮實重彦、ジャン・ドゥーシュ、シャルル・テッソンが語る吉田映画の作品論は必見で、だいたい3つの時期に分類される吉田映画の変遷がわかる。知的かつ言葉を選びながら、誠実に話す吉田喜重の姿が胸に焼き付いて離れない。

2023年上半期新作

①郊外の鳥たち(チウ・ション)
②オマージュ(シン・スウォン)
③イニシェリン島の精霊(マーティン・マクドナー)
④⻘いカフタンの仕立て屋(マリヤム・トゥザニ)
⑤小さき麦の花(リー・ルイジン)
⑥エンパイア・オブ・ライト(サム・メンデス)
⑦J005311(河野宏紀)
⑧夜のロケーション(マルコ・ベロッキオ)
⑨ベネデッタ(ポール・ヴァーホーヴェン)
⑩モリコーネ 映画が恋した音楽家(ジュゼッペ・トルナトーレ)

⑪帰れない山(フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン/シャルロッテ・ファンデルメールシュ)
⑫アルマゲドン・タイム ある日々の肖像(ジェームズ・グレイ)
⑬トリとロキタ(ジャン=ピエール・ダルデンヌ/リュック・ダルデンヌ)
⑳レッド・ロケット(ショーン・ベイカー)
⑭フェイブルマンズ(スティーヴン・スピルバーグ)
⑮リバー、流れないでよ(山口淳太)
⑯母の聖戦(テオドラ・アナ・ミハイ)
⑰ボーンズ アンド オール(ルカ・グァダニーノ)
⑱エンドロールのつづき(パン・ナリン)
⑲同じ下着を着るふたりの女(キム・セイン)
⑳エゴイスト(松永大司)

2023年上半期旧作

①唯一、ゲオルギア(オタール・イオセリアーニ)
②そして光ありき(オタール・イオセリアーニ)
③コシュ・バ・コシュ 恋はロープウェイに乗って(バフティヤル・フドイナザーロフ)
④穴の牙(鈴木清順)
⑤ノー・ホーム・ムーヴィー(シャンタル・アケルマン)
⑥マリとユリ(メーサーロシュ・マールタ)
⑦ヴィレッジ・オン・ザ・ヴィレッジ(黒川幸則)
⑧ゴールデン・エイティーズ(シャンタル・アケルマン)
⑨ロバート・アルトマンのイメージズ(ロバート・アルトマン)
⑩ラブ・ストリームス(ジョン・カサヴェテス)

今年の上半期も毎週現場に通いつめ、映画に纏わるあらゆることを現場で感じ、考える充実した日々を過ごしました。いつも私のテキストを読んで下さり、いいねを押してくれる皆様に心より感謝を申し上げます。考えが全方位的でとりとめもない側面もありますが、いつも応援して下さる皆様には感謝しかありません。ありがとうございます。今後とも宜しくお願い申し上げます。
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