コマミー

見えざる手のある風景のコマミーのレビュー・感想・評価

見えざる手のある風景(2023年製作の映画)
3.8
【エイリアンに管理される人間社会】


※皆さん、明けましておめでとうございます…って、そんな気分じゃない人もいるかもしれませんが、Filmarksではご挨拶を済ませてなかったので一応書かせてください。新年早々、めでたい気分が大地震で一気に奪われてしまいましたが、被害に遭われた方の無事を祈ると共に、それ以外の方はこれで気落ちせずに、今まで通りの生活を心がけてほしいです。自分の趣味を躊躇う必要もないんです。こんな時だからこそ、私たちは心も体も健康に保つ事を心がけましょう。余裕がある方は、募金などの支援も。自分にできる事を行いましょう。
さて私はそんな中、新年早々アマプラで非常に奇妙な"ブラックSFコメディ"を鑑賞しましたので、2024年のレビューはそれで始めます。




非常に奇妙なSFコメディだった。

"ヴァーヴ"というエイリアンによって"支配・管理"されてしまった近未来の"人間社会"を描いた作品で、その中で描かれる恋愛や我々の現実社会での"社会的構造に対する風刺"を描いた作品だ。
あまりにもぶっ飛びすぎた内容のため、最初私は「メン・イン・ブラックの逆構造」かなと想像したりしたのだが、確かに構造的には「メン・イン・ブラック」や日本の漫画で言う「銀魂」の世界での人間とエイリアンの立場を逆にしたものなのは間違いないのだが、そんな単純な話ではなく、人種間の"価値観の違い"や"プロパガンダとアートの関係性"なんかも描いていて、まさに世界を見据えた"社会構造への皮肉"が描かれていた作品だったのだ。

このヴァーヴという存在が申し訳ないのだが、人間社会を蹂躙してしまうほど強さが見えなかったのだが、"人間界の有力者"はそんなヴァーヴから受けた"恩恵や価値観に賞賛して"、"あっさり地球に受け入れ"、"あっさり支配される"…これは正直、今の"日本とアメリカの関係性"と全く同じなのではないかと、この作品を見ながらやはり絶望してしまった。この絶望感を、こんな間抜けそうなエイリアンが出てくるSFコメディからも直面してしまうだなんて。もっと言うならば、ロシアと北朝鮮、アメリカとイスラエルみたいな…。
何かが強い外部勢力に、何かが弱い自分の住処があっさり支配される構造と同じで、逆にリアリティな社会的恐怖を味わえる作品だった。

そんな社会にも、恋愛はつきもの。

"2人のティーンエイジャー"である主人公が、大人達の勝手な倫理観、そして自分達の友情や恋愛感情をも口を出してくるエイリアンにまどわされ、2人の中でも亀裂が入るのだが、これを2人はアートを通して見返そうとするのがとても面白かった。
と言うより、本作は本当に大人の倫理観に振り回される2人があまりにも可哀想で本当に胸が痛くなるのである。人種間の対立が、"若者の未来にどれだけ悪影響"を及ぼすのか…そんな現代的な批判も込めた作品だったのだ。

アマプラにひっそりと配信されてたので、気づかない人も多いかもしれないが、本作はなかなかにゆるいようで尖っていて、新年早々凄い作品に出会ってしまった。
エイリアンのルックスも非常に面白いし、2人のティーンエイジャーの友情の動向も目が離せない作品となっていた。ただ、この雰囲気を掴むには少々時間がかかるかもしれないという事は伝えておく。
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