HAL8192

見えざる手のある風景のHAL8192のレビュー・感想・評価

見えざる手のある風景(2023年製作の映画)
3.7
フライングスパゲッティモンスターを崇めよ! ラーメン!

神の見えざる手という有名な考え方がある。自由な市場経済なら神様が上手くコントロールしてくれるとかいう夢のような話だ。それを言葉通り本当にやってしまったのが本作だ。

完全に上位存在に管理された社会が舞台。人間とは絶妙に通じ合えない宇宙的存在が、完全に地球を「平和的?」に植民地化してしまった後の世界。

地球人類は確実に文明レベルが向上し、非常に科学的には豊かになったが、明らかにおかしな貧困と格差が生じていた。

文明レベルは事実上リセットされ、知的な頭脳労働は激減し、会計や弁護士や医者はつまらない職業に身をやつし、普通の人々はホームレスに落ちていった。

そんな中で貧困に苦しむ主人公は、愛らしい彼女との恋愛風景を宇宙人たちにリアリティショーとして生配信し、小銭を稼ぎ始めるが……というような内容。

非常にブラックユーモアに溢れた作品で、文化と科学を与えてくる(押し付けてくる)宇宙人たちがなんの比喩なのか考えたくなる。現実の風刺としてもブラックなコメディ要素は実に面白い。

それになんと言っても、宇宙人のデザイン! 
絶妙に気持ちの悪い生物なのだが、妙に愛らしく、シャコのような飛び出た目玉がなかなかインパクトがある。結構好きな見た目だ。
もちろん画面越しに、観察するだけなら!

また主人公の境遇や人間関係のドロドロっぷりが、最悪に絡み合う感じが良い。現実に順応するしかない貧困・下層・植民地の人々のごまの摺りっぷりが実に滑稽でたまらない。これだけ擦り寄っても宇宙人となかなか話が通じない具合も、ブラックコメディなら楽しめる!

話がドンドン酷くなっていく中で、最後の最後多少話が通じた……と思ったところに、モナリザにトマトを投げつけるかの如き所業は最悪で最高だ。もちろんその後のタイトルの回収も見事! 意外と終わり方は綺麗で、良い余韻が残った一本。
HAL8192

HAL8192