Jun55

狼と子羊の夜のJun55のレビュー・感想・評価

狼と子羊の夜(2013年製作の映画)
4.5
IMW2023(パート1)にて鑑賞。
IMDb8.1、タミル映画でカルト的な扱いになっている、ということで期待していた作品。
期待通りの心に刺さる印象深い作品だった。
自分の評価軸に独自性(ユニーク性)もあるのだが、つまり、新しいものに接する時の感動、驚きがそれで、独自性がこの映画の魅力のひとつであることは間違いない。
(この映画はカルト映画と言われるだけあって、他の映画にも影響を与えているのではないか?「囚人ディリ」も頭に過る)

映画としては、スリラー、アクションなのだが、ヒューマニズムがベースにある感動のストーリー。(感涙にむせんだ)
前半の登場人物の立ち位置が後半に入ると徐々にそれが明らかになり、そして認識が変わり、後半に真相が明かされる。
「ウルフ」が過去を人間を動物に例えて語るシーンがクライマックス。”正義”がひっくり返る場面。
過去のシーンを映像化せず、長回しの語りとしたところも斬新、そして効果的ではないか。

この映画の特徴は、全編を通しての緊張感。
それには、絶妙のカメラワーク、ライトニング効果が挙げられる。
また、緊張感という意味では、大御所Ilaiyaraajaの哀愁漂う音楽がとても効果的。
インド音楽というよりもヨーロッパのクラッシック風であるので、厳かな雰囲気が醸し出されている。
この音楽の効果は協調し過ぎることはない。

この映画は社会問題への批判も含まれている。
ダリット、ヒジュラ、盲人。
彼らがヒンディーではなく、キリスト教徒であることの意味。
差別される側がこの映画では重要な要素を持ち、それと犯罪、人間性、正義が絡み合う。
警察が「正義」の観点で反対側に描かれているところもインド映画では定番的だが、考えさせるところ。(警察を描く効果は、「正義」は、制度や仕組みではない、という大きなメッセージではないか)

Mysskin監督は、主演(ウルフ)に加え、プロデュース、脚本等も担い、まさに自らの才能をフル回転。
ただ、インド映画界で、マルチタレントは珍しくなく、そこがインド映画界を高めている。
Mysskin監督の作品はこれが初めてだが、機会があれば他の映画も観てみたい。
Jun55

Jun55