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さよなら萩ツインシネマのmasayaのレビュー・感想・評価

さよなら萩ツインシネマ(2023年製作の映画)
3.9
新幹線も無い、高速も繋がってない日本一行き辛い町の中途半端に古い映画館、でも何か良い感じそれが萩ツインシネマ!映画祭開いても関係者しか来ないしもうやめる。やけっぱちの変人支配人スミコさんの周りは波乱だらけ。映画愛映画の狂った変奏曲日本海沿いにて爆誕。

自由すぎるスミコさん、自由すぎるエキストラでカオスになってるところに給水タイムのように現れる本職俳優陣。彼らの演技で一息つくも、次の場面でまたセーラー服のスミコさんが踊ってる、という収拾つかなさ。お決まりの人情話で済ませたくないよっていう意思を感じた。

クラウドファンディングや映画祭でゲストを呼んだりは話題にはなるけど継続的な支援になるの?という問いは耳が痛い話。普段の映画館にいつも来るお客さんが必要なのに、町の人の反応が冷たければ意味がない。よその人は居なくなるのも早い。

映画館で映画を観ることをどう捉えるか?というのは大事な問いかけだと思った。映画館に行かなくなった人は配信やブルーレイで代替が効くものだと思ってるから。自分と向き合う、きっかけになる言葉を貰う、教会の礼拝室に近いと考える人には、映画館はずっと必要だ。

映画を観て自分と全然違う人生を仮想体験するという神父さんと、映画に自分の役で出演して実際の自分と違う決断をするスミコさんが重なる。映画を観ることと撮ること・演じること、そして上映することは、案外近いのかも知れない。そう思うと共犯関係のようだ。

少なくとも屋上からたまたま見えた指月山を「孤独な感じがする」って言った青年の感性は信じられるって思った。彼が片田舎の映画館の映画祭に一番に応募する心境とか、それを観ずに迷わずエントリーする支配人の心情とか。そんなのが積み重なったのが小さな映画、小さな映画館への信頼と共感。
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