メッチ

貴公子のメッチのレビュー・感想・評価

貴公子(2023年製作の映画)
3.5
命を狙われる珍道中を生きる術は、逃げるところは逃げ、混血を見下す者には一発ぶん殴る。

韓国ノワール系の作品にしては、かなり面白くまとめられていたような作品でした。主人公が殺し屋にひたすら追われるようなお話で、どこかおふざけをしていたよう。でもそんなことをしつつも、差別に触れてもいました。
韓国とフィリピンの両親のもとで生まれた子を「コピノ」とフィリピンでは呼ぶそうですが、血統を重んじる文化圏では、それだけで侮辱や差別に値する言葉。そんな「コピノ」をテーマに掲げて、見下す者たちにはとりあえず殴りかかっていたかのようにも感じました。
昨今は差別をテーマに掲げた作品が多いですし、本作もそこまでインパクトがあるわけではありません。ただ鋭さがあるというか、拳の威力はなくとも、エッジが効いている感じ。少し変わり種だったことは確かです。

それにしても、テーマに掲げていた血統主義。そもそも正しい考え方なのかと作品から問われていたように感じましたが、日本も血統主義がまだ残っているような気はしています。それに、私の環境は全部が全部その主義で仕切られているわけではないため、憤りを感じることはなく鑑賞していましたね。
でも、本作を作られた監督は、そんな環境下にいたのでしょうか?と、思わされるほど想いみたいなものがあったように感じました。本作の主人公と同じ立場ではないと思いますが、血統を重んじる文化圏で不遇を受けていたのかもしれません。

結局のところ、血統で良し悪しを決めるのも人の価値観なので、私がとやかくいうことはありません。でも、血統に限らずその人の価値観を否定されることで傷つく人はいるので、否定はよくない。それに、歴史上で己の価値観を押し付けた人ほど、人から恨まれ滅んでいる。価値観を重視するあまり、本質を見失った代償なのでしょう。
本作には、そんな本質を見失った者を教訓として描いている気がしたため、シンプルに面白かったと思います。
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