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ラ・メゾン 小説家と娼婦のDのレビュー・感想・評価

ラ・メゾン 小説家と娼婦(2022年製作の映画)
2.9
セックスワーカー蔑視に対峙しようとしている映画。明確なメッセージはなく、ドキュメンタリー的作りになっている。

世間の蔑視がセックスワーカーを追い込んでいる、と言う。
成人の自由な選択の結果としての売春にとやかく言う権利はないだろう。ただ、問題はそこに誘導されて搾取されてしまう女性(特に若い女性や社会的に弱い女性)が数多いること。この場合、社会として売春を肯定することは、彼女たちを守ることを難しくしてしまうと思う。

この映画では娼婦の仕事を「人を喜ばせる仕事」として描く一方で、一部の客からの侮辱、暴力も、娼婦をやめる要因として描いている。また、男性(友人、恋人)に打ち明けた時の反応からも、娼館での関係性は女性が考えているほど対等ではなく、男性側には女性を利用している意識があり、その利用される側に自ら回っているエマに対し失望しているようにも見えた。エマとしては自分も利用しているのだが、力の差などからどうしても立場は弱い。
この自らの弱さを楽観視できている間だけ、女性は売春を肯定できるということだと思う。

この映画は必ずしも売春を肯定するものではなく、考える材料の提供をしていると捉えました。やっぱり私たちは弱い。弱い存在として扱われることに憤りを覚えることはあれど、エンパワーメント以前にどうしても体が弱いことは変えられない。この弱さを無視して全てを対等にしようとすることには、私は自分を守るために反対せざるを得ないです。
社会から売春という選択肢を排除することは最早できないと思いますが、それはやはり最悪の選択肢であるべきです。自分の弱さや人間がいかに簡単に人を傷付けられるかもわかっていないような子たちが気楽に選べる選択肢であるべきではない。勉強になる映画でしたが、少し心配です。
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