Jun潤

ラ・メゾン 小説家と娼婦のJun潤のレビュー・感想・評価

ラ・メゾン 小説家と娼婦(2022年製作の映画)
3.6
2023.01.06

予告を見て気になった作品。

ベルリンで暮らす小説家のエマは次回作に悩んでいた。
ある時、既婚者の親友と一夜を過ごしたことをきっかけに、ジュスティーヌという娼婦として働き、その経験を執筆することを思い立つ。
しかし、同僚からの冷めた視線や薬を無理矢理吸わせる客に耐えられず店を飛び出す。
半年後、エマは引き続きジュスティーヌとして、“ラ・メゾン”というお店で働いていた。
娼婦として様々な客のことも見ながら、ラ・メゾンでは同僚の働き方や価値観に注目していた。
妹や親友の心配をよそに、エマは娼婦の世界に深く嵌っていく。
それは、小説のためか、自らの肉欲のためかー。

なるほどなるほど……
小説家が夢やそれを叶えるのに必要な生活のためと娼婦の仕事をせざるを得ない状況から一転、いつしか自らの欲望を満たすためのものになり、いざ夢が叶う状況、娼婦を待ち受ける過酷な現実に直面すると、執筆活動と取材活動の境界線が曖昧なことに気付き、それでも見ないふりを続けるエマの弱く人間臭い姿。
娼婦の世界もまた、色んな性癖を持つ客たちや、生活や欲望のためだけでなく色んな目的のために働く娼婦たちを描いていて、群像劇のようにも見えましたね。

うーんしかし個人的には物足りなかった感じ。
舞台となっている世界、そこで生活している人たちを濃いめに描いていた割に、メッセージ性やドラマ性はあまり見合っていなかったように思いました。
もう少し人間の醜さや悍ましい人間社会の闇の深い部分まで描けそうなポテンシャルを秘めていそうな気がしたので、その辺がもう少し欲しかったところですかね。

小説を書くための娼婦という手段が、いつしか目的になっていたエマを待っていたのが、娼婦としての幸せややりがいを感じ始めたり、いわゆる“普通”の幸せを享受しかけた時に生じる不安を感じたりと、ストーリー的にどっちにも振り切らなかったことが巡り巡ってエマの人生にそのまま返ってきていたのは面白かったですね。
Jun潤

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