櫻子の勝手にシネマ

私はモーリーン・カーニー 正義を殺すのは誰?の櫻子の勝手にシネマのレビュー・感想・評価

4.0
イザベル・ユペールが主演を務め、フランスの原子力会社の労働組合代表が国家的スキャンダルに巻き込まれていく姿を、実話を基に描いた社会派サスペンス。
監督はジャン=ポール・サロメ。

1人の女性が5万人の雇用を守ろうとしたことが黙殺され、その女性の人生そのものが全否定された『モーリン・カーニー事件』とはなんだったのか?
この映画は、そのことを深く考えさせられる作品だ。

本作は最近よくお目にかかる“実話を基にした”映画である。
直近だと『福田村事件』や『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』が有名だが、本作もそれら同様かなり重い事件だ。
ただ、前2作品は100年ほど前の話だが、本作はたった10年程前の話である。
しかも、先進国であるフランスで起きた事件だけに余計恐ろしく感じる。

飽きないストーリーとサスペンス要素満載で最後まで目が離せなかった。
イザベル・ユペールの衣装がカット毎に変わわるのも良い。
労働者の味方というわりには女性らしいラインのアイテムをサラリと着こなすセンスの良さ。
そして彼女のトレードマークでもある真っ赤なルージュ。
さり気なく首元に巻いたスカーフのあしらい方や、バッグの持ち方、ブラウスの胸元の開け具合など、全てに彼女らしいエスプリが感じられる。
さすが仏マダムである。

余談だが、主役のモーリーンを演じたイザベル・ユペールは御年70歳とのことだが、実在のモーリーン・カーニー氏は1956年生まれなので、ほぼ同年代だ。
暴漢に襲われたのがフクシマの翌年2012年なので、モーリーンが50代後半頃の話である。
そう思うと、同じ女性として改めて彼女に敬意を表したい。