たく

若い傾斜のたくのレビュー・感想・評価

若い傾斜(1959年製作の映画)
3.7
西河克己監督1959年の中編。若者の理想が現実に打ち砕かれる話が鋭くまとまっててなかなか見応えあったね。司法試験合格を目指す苦学生の川瀬が師と仰ぐ弁護士の緒方がまさかの企業汚職の隠蔽に加担してるという、理想と現実のギャップの話。半世紀以上前の映画だけど、今のリアルな日本の政治の不正隠蔽がそのまま重なって背筋に寒いものが走った。

緒方が川瀬と同じ苦学生という境遇により苦労を強いられたことが強烈なコンプレックスになって、娘を愛する川瀬を同族嫌悪的にしか見られない。彼のしたたかな上昇志向が誰もが己の利に走る殺伐とした組織の現実をむしろ積極的に受け入れ利用してて、この二人の対比が理想に燃える若き川瀬がもしかしたらこれからそうなるかもしれない薄汚れた老年の姿を暗示してた感じ。

本作は「風のある道」が良かった清水まゆみ目当てで観て、あっけらかんとした中にまっすぐな気持ちを持ち合わせてる役がやっぱり良かったね。浅岡ルリ子の清楚なお嬢様役を見るのは初めてで、魅力が開花する前って感じだった。
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