三隅炎雄

若い傾斜の三隅炎雄のレビュー・感想・評価

若い傾斜(1959年製作の映画)
4.0
電気会社に務めながら弁護士を目指す川地民夫が自社の汚職事件に巻き込まれる。西河克己監督による社会派サスペンスの秀作。一応メインは川地と浅丘ルリ子の形を取っているが、実質の主役は川地の友人の赤木圭一郎と清水まゆみと言っていい。
赤木・清水のふたりがギラギラ放つ主体的な反逆精神は同時代の増村保造・中平康作品に通じるもので、脇役にも関わらず映画の魅力を殆ど掠め取っている。彼らに比べると川地・浅丘は型に嵌まった建前的な造型で、脇の肉食的な赤木・清水によって揺すられ小突かれる人形の役割に見える。これは最後の最後に漸くその人形たちが人間になる話と言ったらいいだろうか。
80分弱のタイトな仕上がり、サスペンスとしても青春映画としても上々。脚本は池田一朗と小川英のオリジナル。

清水まゆみはこういう自己主張の強い主体的な人間をやると抜群。赤木圭一郎はまだ主演映画なしの頃だが、画面に出ると自然とそっちに目が行くくらい存在が際立っている。演技は上手くないのだがスケールが大きいというか。

増村中平と松竹ヌーベルバーグの間にこういう映画があったのが分かる。
三隅炎雄

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