大道幸之丞

鏡心の大道幸之丞のネタバレレビュー・内容・結末

鏡心(2005年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

「女性という存在そのもの」とも言える感触の作品。ハマる人もいるだろう。

監督である石井岳龍の元カノが体験したという不思議な臨死体験を再現する試み。石井監督ではなく女流監督が撮ったような。異質さがある。
市川実和子の個性と彼女固有の自然な魅力で引っ張っている作品。

ヒントになった、石井監督とスタースタイリスト北村道子氏とのエピソードが特典映像で収録されていたが、二人は全く意識さえしていなかったようだが、ここで描かれている「鏡心」とは仏教で法華経の世界である。

なんとなく答えも心の奥底でわかっているようでもその手前に留まり続け違和感を引っ張り続けている主人公の女優。

織り込まれる大自然の情景と3Dサウンドで包み込まれるような不思議な没入感でこのファンタジードラマは進む。

結局、自身の現在に行き詰まり、酒に混ぜたドラッグでオーバードーズを引き起こしす。

すると夏を少し過ぎた日差しの優しい海辺で、いつか渋谷で自分の分身のように寄り添ってくれた寂しげだった少女に出会う。本当を言えば会える気もしていた。

たわいない話が続くと思われたが、その少女に「あなたは本当はわかっているでしょ」「あなたには待ってくれている人がいる」と諭され、「また会えるか」と尋ねると「私はここに住むと決めたから(もう会えない)」と答える。

ここで私はここで次の場面が予想出来たが果たしてその通りになった。

次の瞬間病院のベットで看護師の声で目覚める。その横では心臓マッサージで、「帰ってこさせようと」手を尽くしたが無駄に終わり息を引き取った少女の姿があり、それは海辺のあの少女だった。

二人は同じようにオーバードーズを引き起こし、ほとんど同時に病院に運ばれたらしく、女優の主人公には見舞いに仲間が駆けつけてくれているが、あの少女にはだれもいない。身元も不明らしい。

————石井監督は劇中で「彼女の話してくれたこの臨死体験はあまりにも都合よく出来すぎているので、嘘ではないかと思っている」と語るが、「しかしそれが事実かどうかではなく、彼女がその後立ち上がって行けた事に意味がある」と結んでいる。

わずか50分程度のファンタジードラマだが、魅力ある作品だと思う。