木蘭

パリ・ブレスト 〜夢をかなえたスイーツ〜の木蘭のレビュー・感想・評価

3.6
 若きパティシエ世界チャンピオンのヤジッド・イシュムラエンの自伝を劇映画化した作品。
 恵まれた生い立ちとは言えない環境ながら、人一倍の努力と才能、押し出しの強さと周りの人々の助けを得ながら成り上がっていく・・・俺って凄いだろ?映画でもあるよな。

 日本版予告編の様に全編キラキラとした甘い味わいでは無く、もう少しビターな作品・・・とは言え、貧困のリアルな苦みがキツい味付けでは無く、ほろ苦いチョコぐらいの仕上がり。
 才能を生かして必死に努力すれば成功するよ!・・・という道徳的な映画でもあって・・・それ故に分かりやすい悪役が一人出てくるけど、基本的には「なんだ、お前。良いやつだな!」っていう理解あるキャラクターしか出て来ない所とか、演出の仕方(菓子作りで集中すると、周囲が暗転してスポットライトが当たるとか)が何処か漫画的だったりする。

 監督は助監督や短編映画でキャリアを重ねて長編映画は初めてらしいが、アートディレクター出身という事もあり映像は素晴らしく、時折ハッとさせるモノも感じた・・・途中までは。

 えっと・・・劇中でパティシエの師匠が言っていたよな・・・「素材は3つまで。出来るだけシンプルに!」って。

 2時間弱の尺の中に、色々と盛過ぎだし、詰め込みすぎ。
 それ故に、物語が展開して行くに従い、焦点や流れ、勢いが散漫に。
 特に後半の世界選手権のくだりは、いらなく無いか?・・・尺もさして無く取って付けた様にパタパタと展開し、(観客は結果を知っているから)緊張感が乏しく、躍動感も無い。

 でも監督の問題というよりは、色々と盛り込まなければいけないと言うか、大胆に脚色と編集を出来ない事情があった様にも感じられた。
 なんか色々とスポンサーが付いていそうだし・・・勝手な脚色をされたくないからと、ヤジッド本人が菓子作りの監修のみならずプロデュースにも加わっているとの事で・・・それもマイナスに働いた気がするんだよなぁ。

 因みに、主人公はモナコのホテルで働いて時にホームレス状態で毎晩野宿をしているのだが・・・モナコで絶対に野宿は出来ないぞ・・・と思っていたら、実際はニースで野宿していたらしい。
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