コマミー

ダンサー イン Parisのコマミーのレビュー・感想・評価

ダンサー イン Paris(2022年製作の映画)
3.8
【悲劇のヒロインからの脱却】


※fans voice様のオンライン試写会での鑑賞




「スパニッシュ・アパートメント」「ロシアン・ドールズ」「ニューヨークの巴里夫」と言った「青春三部作」でお馴染みの"セドリック・クラピッシュ"監督。
そんなクラピッシュ監督は、思春期の頃から一観客として"ダンスに情熱を燃やし続け"、多種多様なステージを鑑賞したと言う。2010年に"パリ・オペラ座のバレエのエトワール":オーレリ・デュポンのドキュメンタリーを完成させたり、コロナ禍にはパフォーマンスの場を無くしたダンサーたちが自宅で撮影した映像を編集して作った「メルシーと言うこと」と言う短編を作り上げるなど、クラピッシュ監督は常に"ダンサーたちにも寄り添った映画"作りもしてきた。
そんなクラピッシュ監督が、"20年来"の構想を練って作られた作品が本作だ。

パリ・オペラ座のバレエ団でエトワールを目指す"エリーズ"だが、夢の実現を目にして"恋人の裏切り"を目にしてしまい、そのショックで演舞中に"足を負傷"してしまう。医師から「このままだと踊れなくなる」と宣告され、"失意の連続"のエリーズだがある日、料理のアシスタントの仕事で訪れた"ブルターニュ"である"ダンスカンパニー"と出会う。
そこではバレエの流れを汲む"コンテンポラリー"と言うダンスが行われていて、エリーズは心を打たれ、希望を見つける。

エリーズを演じるのは、実際にバレエとコンテンポラリーを行き来するダンサーでもある"マリオン・バルボー"と言う女性である。"映画初出演"にも関わらず彼女が本当に魅力的な演技を見せてくれた。彼女がエリーズとして見せる、オープニングの"バレエシーン"と中盤とラストで見せる怒涛の"コンテンポラリーのシーン"は本当に圧巻なので注目してほしい。
それにコンテンポラリー界で名高い"ホフェッシュ・シェクター"と言う人物が、本人役で出演しており、エリーズの人生を変える重要な人物として勿論役目を果たしていた。
そしてエリーズの"良き理解者の1人"として"ヤン"と言う理学療法士の男が登場するのだが、これを「おかえりブルターニュ」からクラピッシュ監督の作品に出演している"フランソワ・シビル"が演じていて、これもエリーズとうまく調和のとれてる役所で良かった。

そしてこれはセドリック・クラピッシュの"今までの作品づくり"が効果を奏してるなと感じた。
"平凡さの輝き"を物語に映すことが多いセドリック・クラピッシュ監督。本作にもその手法がふんだんに使われていて、何気ないシーンにも小ネタを入れていて、非常に"親しみやすい作品"になっていた。

セドリック・クラピッシュのダンスへの情熱が、バレエやコンテンポラリーにあまり親しみがない人たちにも分かりやすく伝わっているダンス映画だった。
実際のダンサーであるマリオンのダンスも演技も目を奪われたし、ダンスに全く興味がなく、エリーズとも上手くいってない父との親子の物語でもあった。

ダンサーを志してる人も純粋に音楽映画が観たい人は、本作も視野に入れてみてはいかがですか?
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