こなつ

ダンサー イン Parisのこなつのレビュー・感想・評価

ダンサー イン Paris(2022年製作の映画)
4.2
あまりの素晴らしさに声が出なかった。劇場での鑑賞で久しぶりに味わった興奮。

セドリック・クラピッシュ監督の最新作。主演のマリオン・バルボーは、世界最高峰のバレエ団パリ・オペラ座の現役のダンサー。プルミエール・ダンスーズでクラシックとコンテンポラリーを自在に行き来する次代を背負うダンサーとして今最も注目されている。

怪我によってエトワールの夢を諦めなくてはいけなくなったバレエダンサーのエリーズ(マリオン・バルボー)は、旧友に誘われて行ったプリュターニュの地で、独創的なコンテンポラリーダンスの世界に初めて触れ、未知なるダンスを踊る喜びと新たな自分を発見していく。

映画初主演で演技も初めてというマリオン・バルボーだが、さすがプロの表現者。失意の中で模索するエリーズの心情を丁寧に演じていて素晴らしかった。セザール賞の有望若手女優賞にノミネートされている。頭のテッペンからつま先まで、これぞバレエダンサーという彼女の柔軟な身のこなしは正に本物。オープニング15分のバレエシーンは圧巻だ。また本番前のダンサー達の神経を研ぎ澄ませる姿をカメラが追い、普段観ることの出来ない舞台裏も知ることができる。

エリーズの父アンリ(ドゥニ・ポダリゲス)との父娘の関係、才能あるアーティスト達に練習の場を提供するレジデンスのオーナー・ジョジアーヌ(ミュリエル・ロバン)との温かな交流など、笑いあり涙ありの素敵な物語。

監督自身が、生涯に渡りダンスへの愛と情熱を傾けてきた人だけあって、何もかもが妥協のない映像のひとつひとつに心奪われて行く。

コンテンポラリーダンス界の鬼才と言われているホフェッシュ・シェクターが本人役で出演。また、フランス出身のダンサー、メディ・バキも本人役で圧巻のダンスを披露。映画としてのひとつの物語の中で、本物のパフォーマンスを観ることが出来るとても贅沢な作品だった。魂の叫びを感じる独創的なコンテンポラリーダンス、ただただ心揺さぶられた。
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