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ダンサー イン Parisのtetsu3のレビュー・感想・評価

ダンサー イン Paris(2022年製作の映画)
4.5
“人生のすべてを味わって”

魅了される。

驚きのオープニングから、エンドクレジットの変化。
どちらもクラシックバレエとコンテンポラリーダンスの違いを見事に音楽で表現している。

エリーズを演じたマリオン・バルボー。
背中の筋肉を見ただけで、本物とわかる。
初演技とのことだが、ダンスと演技には表現力という共通点があるのかもしれない。

主役の彼女だけじゃない。
家族、友人、仲間、恩人、すべてが彩り鮮やかに描かれる。
そう、料理も表現、つまり芸術のひとつなんだよね。

挫折からの勇気ある歩みへ力を貸す人たちの言葉や行動。
そして、新しい世界への一歩を踏み出したとき、その表情は、輝いていた。

娘から見た父親と、父親から見た娘。
言葉に表していないことに気が付かないくらい、常に愛しているんだよ。
アンリと同じタイミングで涙が流れてきた。

母が最後に遺した言葉。
エリーズはようやくその意味を理解できたね。

何よりも圧巻なのはダンスシーン。
冒頭とラストに舞台を対極的に配置する。

クラシックバレエは、オケの奏でる音楽に合せ、身体に負担のかかる姿勢と全身の筋肉が緊張する様を映し出す。
それは、秩序ある舞が魅せる“型”の様式美。
コンテンポラリーダンスは、ストリングスから和太鼓までが融合した音楽の渦に、時に力強く、時に脱力した姿を醸し出す。
それは、混沌とした“無型”の表現力。
どちらにも共通しているのは、溢れる熱量。

唯一の不満は、日本語タイトル。
原題のEn Corpsは、直訳で「身体の中で」。
まさに、ダンスは、身体の中で生まれたものを外に表現するものであり、ダンサーというのはどんなジャンルであれ、表現者なのだということをこの作品から感じることができた。
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