木蘭

ダンサー イン Parisの木蘭のレビュー・感想・評価

ダンサー イン Paris(2022年製作の映画)
3.8
 オープニングシークエンスが「007」みたいで笑ってしまったが、全編に渡って美しい光と色彩に満ちた画面の中で、ダンサー達の肉体美が躍動する。
 監督がパリ・オペラ座でドキュメンタリーを撮っていた事で実現した劇映画だけあって、挿入されるダンスシーンは素晴らしいの一言。特にオープニングとエンディングは圧巻。

 ヒロインを演じるマリオン・バルボーを初め、ダンサー役は超一流の本物で、相手役を務めるメディ・バキと振り付け師のホフェッシュ・シェクターに至っては本人。旧友のサブリナ役のスエラ・ヤクーブだってスイスの新体操ナショナルチームの元メンバー。
 ヒロインがオステオパシーを施術されていたり、筋トレしているだけでも鍛えられたアスリートの肉体が美しい。
 兎に角、本物の迫力に圧倒される。

 では、劇映画としてはどうか・・・というと、一寸弱い。
 美しい精神と肉体とが・・・群舞であれば個々の踊り手たちが、舞台の上で一つに融合するのがダンスなのだろうが、映画だって同じだ。

 傷付いた若きダンサー、家族、友人達のそれぞれが再生していく群像劇なのだが、クライマックスに向かって一つに昇華して・・・いかない。
 役者も良いし、映像も美しい、一つ一つのシーンは良く出来ているのに、作品全体としては雑でバラバラ。群像劇としても中途半端か。
 特に恋愛の部分は蛇足。ヤンのエピソードとか、メディとの絡みとかって必要か!?

 役者としては素人を起用しているからか、ドキュメンタリー風に沢山素材を集めて編集で何とかしようとしたのかも知れないが、それにしては余分な部分が多すぎて・・・もっとヒロインの再生物語に絞れば良いのに。

 などと文句も言ってしまったが、ファッションからインテリア、景色にいたるまでオシャレおフランスで一杯の画面は楽しいし・・・日本にだって合宿向けの民宿はあるけど、あんなオシャレじゃないよな・・・ダンスシーンは素晴らしいので必見ではある。
木蘭

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