絵を書き上げた。曲を作り終えた。
これらはまだ芸術ではない。
絵は見られて、曲は聞かれて、初めて芸術となる。
受け手がいない芸術に意味はない。
芸術が表現者と観賞者の共鳴によって生まれる心の揺れ動きとするならば、それはきっと"人生"もそうなのだ。
表現することをやめてしまった者の人生が誰かの心を震わせることなどない。
足を挫いても息が切れても、最後まで大地を踏み締め踊り続けるからこそ人生は輝き、その生き様を見る者の心を震わせるのだ。
観客がたとえ一人でもいい。
誰かの心を震わせる、そんな芸術《人生》を作れたらどれほど幸せだろうか。
…などと思いながらぼんやりスクリーンを眺めた。
正直、映画として素晴らしかったかどうかはよく分からない。感動したという意味では、同じようにダンスによって再起する姿を描いた『裸足になって』(2022)の方が好みではある。
私はダンスへの造詣が深いわけではない。
しかし何だろう。主人公の父が見せた涙の意味がよく分かった。
私の心も震えたからだろうか。
スコアはあくまでもひとつの物語として。
ラストのダンスはまさしく圧巻でした。