イ・チャンドンレトロスペクティヴにて。
この世界を本当の意味で「見たい」と願う老婦人の真摯でささやかな渇望が、世界の美しさではなく直視しがたいまでの醜悪さをこそ浮かび上がらせるという、そのあまりにもな残酷さ。
聖と俗の狭間にある平衡点を恐るべき解像度で描写するイ・チャンドンだが、この作品はその持ち味が最も混じり気のない純粋な形で結晶化している。(なにせ劇伴すら一切ない。しかしエンドクレジットのBGMが川のせせらぎだけであることに気がつくまで、そのことすら意識させない)
映画としてはあまりにもストイックで美しいが、甘美であるがゆえにその毒は危険だとも思った。ソン・ガンホのいないシークレット・サンシャイン。
正直めちゃくちゃしんどかった。
しかし、凄まじい映画であることに疑いの余地はない。