アンソニー

ポエトリー アグネスの詩 4K レストアのアンソニーのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

めっちゃ面白かったです。
詩の部分がより理解出来れば
もっと楽しめるのかなと思います。

始まり方が最高に良かった。
あのタイトルの入り方良い。
何やらただ事では無いぞ…という冒頭から
おばあさんの視点に変わります。
腕が痛いとか物忘れがあるとか
よくいそうなおばあさん。
帰りにスーパーに寄る。
普通のおばあさんだなぁと思っていると
買い物では無くヘルパーのお仕事。
「おばあさんもなかなかのお歳では?」
と少し疑問を抱かせながらも
物語は進みます。
自宅では一人の中高生ぐらいの男の子と
二人で暮らしている感じ。
ここでも「息子にしては若すぎるなぁ…」
と疑問を持ちながらも進んでいく。
それでも詩の教室に通ったりと
普通のおばあさんかなと思っていると
突然、物語が急展開。

ここから今までの疑問やら引っ掛かりが
全部暴かれていく。
この流れが凄すぎてびっくりします。
詩の教室で「じっくりと観察すると本質が見えてくる」的な話がありますが、
まさにその通りです。
おばあさんの日常を見ているようで
しっかり見れていなかった。

おばあさんにどんどん不幸が積み重なる。
大金を払わないといけないし
アルツハイマーになるし
相談出来る友人もいないし
詩も思い浮かばないし
どうすりゃあええんじゃい。
最終的にはおばあさんの頑張りも虚しく
出来る事は詩を書く事だけ。
それはアグネスに向けた詩かもしれないし
アグネス自身が書いた詩かもしれない。
そして映画が終わるまでおばあさんが
姿を現すことはありませんでした。

なんだか周りの人たちが汚く見える。
被害者について言及する人もいないし
事件を隠蔽しようとする大人たちに
罪の意識の無い子供たち。
フラフープのシーンも
子供たちと遊んで微笑ましいようで
「こうやって腰振ってたんかなぁ」とか。
会長の家族たちが談笑しているシーンも
「でもバイアグラ飲むやつやしなぁ」とか。
詩の教室のシーンも
「美しい思い出いっぱい語ってたくせに詩の一つも書いて来ない奴らやしなぁ」とか。
とにかくもう、全部嫌に見えてくる。
この世の中に本当に美しいものって
存在するんでしょうか?
おばあさんも状況が状況とはいえ
会長に薬飲ませてヤッてから
お金を半分脅迫で受け取ってますから
汚いと言えば汚いです。
でも、不思議とおばあさんの人生を
美しいとも思う自分もいます。
だけどこの美しいってのも
かなり身勝手なもので、おばあさんは
大変な思いをしていて苦労していて
傷付いているのにそれを美しいと
高みの見物している。
それは本当に美しいんかいな?
考えれば考えるほど分からなくなります。
でも、そのきっかけを与えてくれた
この映画は最高です。