イ・チャンドンレトロスペクティヴにて。
聖なるものの中にあるこの上なく俗っぽい何か、あるいはこの上なく俗っぽいものの中にある崇高なまでの何かを、一撃必殺の精度で撃ち抜くイ・チャンドン。
そら寡作にもなりますわ…
こういう作品って、当然の帰結として旨味よりエグ味が強く出がちだと思うのだが、（もちろん表面的なエグさは前提としても）作品全体の印象は実に端正なところに着地しているのが凄い。脚本から演出、編集まですべてが引き裂かれた両極のあいだの微妙なバランスに調整されている。シネがある集会でかかってる音楽を差し替えるシーン、やってることのしょうもなさと彼女の中の身を切るような切実さの高低差に、こちらの情緒もグラングランになる。
シーンごとに、少女のようにも老女のようにも見えるチョン・ドヨンの圧倒的な吸引力、ソン・ガンホの愛すべきキュートさたるや。
