ShinMakita

プリシラのShinMakitaのレビュー・感想・評価

プリシラ(2023年製作の映画)
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☆俺基準スコア:2.1
☆Filmarks基準スコア:3.3


1959年…父が空軍将校であったため、西ドイツの退屈な基地暮らしを送っていた14歳のプリシラ・ボーリューは、兵役に就いていた大スター、エルビス・プレスリーと出会い恋に落ちる。2人の交際はしばしの空白を挟みながらも続き、高校在学中にメンフィスのプレスリー御殿〈グレイスランド〉に移り住むことになったプリシラ。転校先の高校も卒業し、やがて結婚・出産を経験していくが…



「プリシラ」


以下、恋とネタバレで着飾っていた。



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映画「エルヴィス」のアナザーストーリーとしても楽しめる(というかエルビスネタの予習はちょっと必要)一本。プリシラ・プレスリーの約10年間…出会いから離婚までを描いています。
確かに〈おとぎ話のプリンセス〉から〈籠の中の鳥〉となり自己主張も反論も許されない生活を送っていく一人の女性のドラマ、なんだけど、それにしてはグレイスランドに来てからドラマ的にあまりパッとしないのが難かな。エルビスとイチャつくか留守番してるかしかないんだもん。エルビスのばあちゃんや使用人との交流とか、エルビスパパとの対立とか、そういうのは無かったのかねえ。あくまでエルビスとの関係だけしかフォーカスしておらず、離婚の決意もなんだか唐突に思えて、疲弊してるエルビスを捨てたように見えちゃうんだよなぁ。

映画として面白い面白くないは置いといて、2つのポイントだけは絶賛したいです。第一は音楽。プレスリーの楽曲ばかりなダサいことはせずにさりげなくラブミーテンダーが流れるセンスがまず良くて、映画「地獄の逃避行」の「Gassenhauer」が指輪渡しシーンで流れたり、別離シーンでドリー・パートン版の『I Will Always Love You』が使われたりと、ちゃんと劇中の時代と合っていながら場面と曲のシンクロ率が高いのが俺のツボでした。
第二は、何と言ってもプリシラ役ケイリー・スピーニーですよ。冒頭、ダイナーで話しかけられた時の彼女のファーストショット。あまりの可愛さに息を呑みました。小柄童顔だから、本当に14-5に見えますよ。〈おとなの階段登る、君はまだシンデレラさ〉というH2Oの歌詞をまんま体現する演技は素晴らしかったです。

バズ・ラーマンの「エルヴィス」との比較で言うと、ミュージシャン・エルビスよりもハリウッドスター・エルビスの描写比率が高かったのが特徴。ウルスラ・アンドレスに対する発言や、アン・マーグレットとの関係などは興味深かったですね。西ドイツでプリシラが初デートで観た映画はボギーの「悪魔をやっつけろ」。憧れを口にするのがマーロン・ブランドの「波止場」だし、ボギーのセリフを誦じてるところからも、エルビスの映画好きな一面が見られます。きっと14歳の女の子の目には「すごいなぁ」と映ったんだろうね。
…不完全燃焼は否めないけど、悪くはない一本。音楽使いと女子描写の達人、ソフィア・コッポラの映画としては満足感あり。
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