toumei

プリシラのtoumeiのネタバレレビュー・内容・結末

プリシラ(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

客観的に見るとエルヴィスはかなり面倒でやばめのモラハラ男だ。でも、プリシラが彼に惹かれ、彼を愛する以外の道はなかったと思う。
退屈で好奇心旺盛な10代、憧れのスターに好きだなんて言われたら。選択の余地はなかったと思う。
彼色に染まって、自分らしさを捨てて、囲われて、他者からは一本線を引かれて、そんな風に生きていくのってやっぱりおかしいし、見方によっては愚かなことだ。
でもそれをやってのけた、乗り越えて生きてきた彼女は偉大だとも思える。
だから、エルヴィスと離れると決心できたのはむしろ結構早かったんじゃないだろうか。あんなに若いうちに自分の道を選んでいけるのはかっこいい。

後に読んだケイリーのインタビューで「(プリシラは)人当たりがよくフェミニンな人ですが、内側には強さがあって、決してvictimではない」とあって、まさにそれが表現されていたと思う。victim=犠牲者、被害者ではなく、不器用でも美しく1人の人間として生きる姿が魅力的だった。

映画としての面白さはちょっとだけ物足りなかったけど、観てよかったと思う。
映像や衣装の美しさ、非言語の表現、キャスティングなどは相変わらず素敵だったし、でもそれだけじゃなくて…
プリシラの恋を心から認められたら、自分自身の過去の恋愛や、恋愛以外の多くの過ちも、受け入れて誇ってあげられるようになるんじゃないかなと思ったから。

それしか道はなかった、間違えるのは無理もなかった。
むしろ間違いというわけでもなかった。あれはあれで幸せな時間もあって、正しくもあった。
巻き込まれた世界の中でなんとか頑張ってきた。
自分の道を探りながら自分の足で歩いて生きてきた。
それで十分なんじゃないか。
プリシラに対してそう思える。
自分自身に対しても、もっとそう思えたらいい。
toumei

toumei