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プリシラのカネコのレビュー・感想・評価

プリシラ(2023年製作の映画)
4.0
ソフィア・コッポラ監督によるエルヴィス・プレスリーと妻プリシラ・プレスリーの出会いから別れまでの約14年間を綴ったストーリー。

原作はプリシラ・プレスリーが1985年に出版した自伝『私のエルヴィス』。
エルヴィスとプリシラの娘・リサマリーと短期間夫婦だったニコラス・ケイジはソフィアの従姉妹に当たり、つまりプリシラとソフィアは遠縁に当たる訳で。すごい華麗なる家系。
そんな伝手もあってか選んだプリシラという女性の物語はソフィアの作品にぴったりの女性だった。

ソフィアが今までの作品の中でテーマとしてきた閉塞感だったり大勢のなかで感じる孤独。
今作ではエルヴィスプレスリーという大スターとの結婚生活で表現されている。

24歳のエルヴィスと出会った時プリシラは14歳。
中学生のプリシラを何度もパーティに呼び出したりデートしたり。
アメリカに戻ってからは2年も連絡無しでいきなり同棲を持ち掛けるエルヴィス。

それでもスターとの恋に夢中のプリシラはアメリカのエルヴィスの自宅へ。
おはようからお休みまでお薬の欠かせないエルヴィスからよく眠れると渡された薬で2日間も昏睡する💊💤

大人目線だとエルヴィスかなりヤバい男なんだけどプリシラはまだ気づく事が出来ず。
エルヴィスとの生活はバイトする事も洋服も自分一人の意思では決められない。
決定権はエルヴィスにある。

そんなエルヴィスは唐突にヒッピーにハマり聖書朗読会したり夫婦でLSDなんて事も。
また性的に未熟な様子のエルヴィス。
セックスの決定権もプリシラには無い。

“そのままの君で居てくれ”
とドイツで別れの時に言っていたエルヴィスは
“髪はブルネットでもっとアイメイクを濃く”
と変わっていく。

ビーハイブヘアとキャットアイライン。
鬱憤を晴らすように着飾ることに湯水の如く税金を遣いヘアスタイルを大きくしていった同監督作のマリーアントワネットのよう。
周りの、特にエルヴィスの期待に答えたい思いがヘアメイクに表れているようだった。

そのうちにエルヴィスがプリシラをサトニンと呼び出す。サトニンとはエルヴィスの母のあだ名。
彼が求めているのは亡き母の代わりになる完璧な存在であり、プリシラは何物にも染まっていないから選ばれたという事実。

2人の身長差もエルヴィスに支配されるプリシラを印象づけている。

広い家の中でエルヴィスの不在時に過ごす時も、エルヴィスがいても彼はいつも取り巻きの男たちに囲まれていてプライベートの会話もままならない様子もソフィアが描きたかった疎外感と孤独でマリーアントワネットと重なる。

ただ今作はマリーアントワネットから一歩進んでプリシラはこの支配的な生活から自分を見つけていく。
出産前につけまつ毛をつけて病院に向かうシーンは(アイライン先派なんだ?自分はつけまとアイラインの間に隙間が出来るからつけま先で後からアイラインしてた)とか思うのと同時にこのメイクは自分の為、庭で不用意にペットと戯れたりマスコミに無防備だったプリシラがマスコミにどう見られたいかといった意思表示も感じられた。

子供が生まれた事で自分の居場所を見つけたプリシラ。
空手の先生との不倫も本当はあったそうだけどエルヴィスとの生活に自ら終止符を打った。

“彼を愛していなかったから離婚したわけではありません。彼は私の人生の最愛の人でしたが、私はもっと世界を知らなければならなかったんです”
ープリシラのインタビューから引用

プレスリー元夫婦は手をつないで離婚のための法廷を後にし、その直後エルヴィスは、プリシラにドリー・パートンの 『I Will Always Love You』を歌ったそう。
今作でのed曲にもなっている。
映画ボディガードのオリジナルでこれもスターと一般人の恋のストーリーだった。

op 『ベイビー・アイ・ラブ・ユー』は、ザ・ロネッツ(The Ronettes)の代表曲で
ここではラモーンズ(Ramones)によるカバー・バージョンが使われている。
この情熱的な恋を歌ったopと呼応するようなedでソフィアのセンスやっぱり良いなと思った。

ソフィアコッポラ作品お馴染みの窓から外を眺めるショットや朝二人のベッドルームのドア前に置かれる朝食たち(エルヴィスサンドも映ってた🍌🥓🥪)やカジノのシーンのお洒落感も素晴らしかったので円盤出たら欲しい💯
カネコ

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