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プリシラの教授のレビュー・感想・評価

プリシラ(2023年製作の映画)
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90年代後半か00年代からひとつのムーヴメントになった「ガーリー・ムービー」の先駆者的なイメージのソフィア・コッポラっぽい映画だなぁという印象。

ひとつの「ジャンル映画」として観るならば本質的なことは「よくわからん」に尽きる。
男性が男性を愛でる「ホモ・ソーシャル」性への断罪とは反対に、女性による女性を愛でること(と連帯)を示す「ガールズ・エンパワーメント」に関しての受容にも首を捻ってしまうところでもあるし、理解が及ばないことは仕方のないこととして。

ただ、作品の存在意義がまったくわからない。「女性の側」としての視点を読み取らざるを得ないプリシラ(ケイリー・スピーニー)の半生。
しかし本作はプリシラの視点から描いた物語でありながら、結局は「エルヴィス・プレスリー」に翻弄された人生として全編に渡って描かれてしまう違和感。
彼女の人生は確かにプレスリーの影響が強いとは思うが、そこからの人生もまたそれだけではないものがあったことは想像できる。
その意味で、本作のエピソードはどうしても平板に見えてしまった。

つまり。
本作では、一方的にプレスリーが「トキシック・マスキュリニティ」としては、偏った描かれ方はしていない、とは思う。
しかし、その辺りが平板であるが故に、有害な男性性の「被害者」としてプリシラがカリカチュアされているようにも思う。

是非はともかく、女性の考えは女性監督故の視点で描かれる「当事者性」については、理解もできるし、理解が及ばないものもあり判断がどうしてもできない。
一方で、プリシラから見えるプレスリーという「男性性」側の、極端に言えば「加虐」の苦悩も絡めた内面は、本作からは見えてこない。

それらを総合的に見て、やはり「観たことある」という作品になってしまって非常に残念。
劇中の音楽についても、特に印象に残らなかった。
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