8Niagara8

オアシス 4K レストアの8Niagara8のネタバレレビュー・内容・結末

オアシス 4K レストア(2002年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

前半結構人間のきな臭さ、危うい雰囲気を感じつつ、後半の持っていき方で見事にやられた。とはいえオープニングでの説明力といったら凄すぎる。
鮮烈なシーン、ショットの連続で素晴らしかった。
警察署と木登り。そこに明確な言葉はないが、それ以上の計り知れないメッセージを持った生命力迸り、様々な感情が駆け巡るような凄まじいシーンであった。

家族でありながら、排他的で分かり合えない感じが実に人間的でありながら、理解しようとしないその態度にやるせなさも十二分に漂わせる。
現実とファンタジー。この行き来にいつしか魅力され、同時に現実の苛烈さに胸は苦しくなる。
二人が互いに共有する時間以外は陰惨な雰囲気が横たわっていて、払拭できない重苦しさがある。
それでいて二人の聖域的世界が別に存在するわけで、そこに純然たる美と儚さを見出せることはかけがえのないことである。
途中の兄夫婦のセックスシーンはコンジュの視点に立てばかなり重要で示唆的なものであった。
コンジュ自身と世界の間になにか明確な境界線があり、隔たりや距離感を感じる中でそれを無視して入り込んできたのがジョンドゥである。
(出会いのシーンについては当然引っかかる。情動的な汚なさを肯定しているわけではないが、その点ジョンドゥに完全なる信伏に至らないジレンマは生まれてしまう。
ただ、ジョンドゥの不完全で醜ささえ象徴するシーンであり、他者による嫌悪感を無にするものが二人の関係性にはあったとも思える。)
コンジュにはそれが善なるものに思えるし、なおさら愛おしい時間が動き出すものであった。
この時間軸のある種歪みが刹那的で美しく、果てしなさも感じる。
周りから見たら不躾で、煙たがられる彼だが、そこに絶対悪は存在していない。
実際には寧ろ我々は彼の周りに悪意を感じるようになるわけである。
愛の普遍性と人間の残虐性。それでいながら、人生は美しく希望的なものでもある。
8Niagara8

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