ハッピーエンドかというとそうでもないんだけど、明るさを感じさせる終わり方だった。出会いや最後に至る経緯はどうあれ、主役二人の会話をみていても、二人が本心でお互いを必要としているのはわかるし、本人たちは強烈な悲壮感や絶望を抱えながら生きているわけでもなさそうなので、それが救い。
強いて言うなら諦念が近いのかもしれない。
そういう意味では2人を囲む人間や社会に対して強い批判を感じさせる。
男性もおそらく軽度の発達障害で、親族も身代わりに利用しながら厄介者扱いする。
(それはそれで仕方ないとも思う、実際主人公の言動みてたらいらつくのもわかるし)
男性も男性で社会に馴染めないという諦念はありつつ、かなり正直に、ストレートに感情のまま生きている様子がある。
女性は女性で、家族は利用しながらも(示談金の
話とかも)、愛情をもって接している様子はある。一方で本当に彼女の意思を尊重し理解しようと寄り添っているかというとそんなことはなく、やはり社会からの疎外感を感じながらいきている。
上記の通り、その上であの出会いから交流を重ねてラストに繋がるわけだけど。
一方でいかようにもひねくれた見方もできてしまうので、自分自身の心の汚さに直面させられて視聴はきつかった。
強いてあげるなら、社会になじめず、疎外された人間同士の恋愛、とかなり抽象化すれば共感の余地が生まれる。
ただ、作品全体の生々しさ(ファンタジーなシーンも挟むとは言え)で提示してくる監督だからそんな見方は邪道なんだろうな。
シェイプ・オブ・ウォーターなんかだと、逆にいかようにも飛躍できる寛容さが残されている。
一方でプロットはかなりわかりやすく作られていて。テーマ、設定、映像、演技の生々しさに比べて、起承転結がしっかり作られていてとても見やすい。のでトータルとしてはドキュメンタリーというよりある種エンタメ的な作り。
そういうバランス感覚があるからこその傑作なのかも。
「こういったハンディキャップがある人たちに対して社会が変わるべき」みたいな見方は自分にはできないし。
「純愛」みたいに素直にみられるほど優しい心は持っていない。
キレイな衣装、キレイなセット、キレイな物語、キレイな役者。そんな世界が大好きで映画を観ている節があるので、その自分の汚さに直面して最初はきつかった。
自分はこういう世界には目をつぶって生きているんだなと再確認できた。
そういう意味で「最強のふたり」とかもきつかった。
「岬の兄弟」とかも絶対にみられない。
この二人の関係性はメタファーとして納得するという落としどころしかなかった。
その一つとして、これってシェイプオブウォーターの元ネタなのかなとも。
テーマとか印象的なシーンがかぶる気がする。
オスカー受賞当時、突然ファンタジーなミュージカルシーンになるのがいやだみたいなコメントあったけど、本作オアシスで挿入される幻想的な場面も同じ効果なのかなと。
ロメールみたいな手持の自然な撮りかただけど、話のプロットがしっかりしていて見やすかった。そこのギャップがよかった。
演技に関しては門外漢ではあるけど、主役2人はすごかった。これを違和感なくできるんだな。
そういう意味では、障害者は障害を持っている人が演じるべきという発想には全くもって賛同できない。