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グリーンフィッシュ 4K レストアのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

3.7
大ファンのイ・チャンドン監督の作品で機会のなかったデビュー作を観ることができて、これでイ・チャンドン監督コンプしました。どれも心のひだをざわざわさせられ、胸の奥を締め付けられる傑作ばかりです。

ストーリーはシンプルに、ヤクザのボスの情婦と純朴なチンピラ(マクトン)との悲恋です。

思っていた以上にバイオレンスでした。でも、役者の演技に加えて、主役のチンピラの葛藤の描き方がうまく、ノワールとして引き込まれました。

家族愛と暴力団のボスへの情の狭間、情婦への哀れみとボスへの敬愛の狭間。
四人兄弟のマクトンは人が善く、兄弟のちぎりを交わした相手には尽くしてしまう。

郊外の都市化に伴い、利権を求めて集まってくる人々の欲望が同じ土地の上に幾重にも渦巻いていました。

その地の社会と主人公の実際の生活が現実的で、フィクションとはいえ、奥行きあるリアリティーを感じさせるところがさすがです。

社会の背景や日常を詳しく描くことで、現実感を加味しているのは特徴に思えます。たとえば「オアシス」と同様に脳性麻痺の家族が登場します。考えてみると、現実社会にはハンディを負った人、マイノリティ、身の回りに日常にいます。映画というフィクションであっても、絵空事にしない、地に足の着いた視点で社会を描く。ゆえに、登場人物の葛藤がこちらに迫ってきます。
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