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6月0日 アイヒマンが処刑された日のTPのレビュー・感想・評価

3.0
 ゲシュタポのユダヤ人移送局長官で、アウシュヴィッツ強制収容所へのユダヤ人大量移送の指揮的役割を担ったアドルフ・アイヒマンは、1960年にアルゼンチンで拘束されてイスラエルに送還。1961年に死刑判決を受け翌年処刑され、遺体は火葬され遺灰は地中海に撒かれた。
 そのアイヒマン火葬に関与したイスラエルのユダヤ人を主に3つの視点から描く。

 ストーリーは、アイヒマンを火葬するための焼却炉作りを手伝った少年の成長物語を主軸に、イスラエルにおいてアイヒマンを民間の憎悪から隔離し、無事に死刑執行を執り行うことに苦心するアラブ系ユダヤ人刑務官と、ナチスドイツの迫害を受けた経験を苦悩しながらも人々に伝えるポーランド系ユダヤ人刑務官のストーリーを絡めて進んでいく。

 映画としては、3つのストーリーはそれぞれこじんまりと良くまとまっており悪くはない。
 個人的には、アイヒマンに対して、欧米系ユダヤ人ほどには憎しみを持たないアラブ系ユダヤ人刑務官が精神的に極度の緊張をもって監視する話が一番興味深かった。

 しかし、そもそも火葬の習慣がないイスラエルでアイヒマンをどのように焼いたのかという疑問点から出発してフィクションを作り上げたと考えられるベースのストーリーは単なる少年の成長物語になってしまっていて、それ自体に魅力がない。
 ポーランド系ユダヤ人の話も他の2つのストーリーとの絡みはなく、短編を3つ合わせたような印象しか残らない。
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