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6月0日 アイヒマンが処刑された日のMKのレビュー・感想・評価

4.0
ユダヤ人を民族ではなく種族として扱ったこと。
お前は自分のためにやった、私は国のためにやったのだ。
私は化石だ、決して忘れさせたくはない。

作品のテーマは死刑判決を受けたアイヒマン。悲しみや怒り、犯された罪の大小をさておけば、組織の弊害、暴走の典型例ではないかとも思うホロ・コースト。

それらがどのようにして実行されたのだろうかと興味が尽きず、『ヒトラーのための虐殺会議』に続いて本作を観賞。

冒頭のメモは作品を通じて突き刺さった言葉。

アラブ系イスラエル人の少年を主軸におきながら、アイヒマンを空白の六月〇日のうちに死刑に処し、遺体として刑務所を出る前にユダヤ教で禁じられている荼毘に付すことを命じられた人々の物語。

新しいイスラエルという国でのアラブ系民俗の生きづらさ、世紀の大犯罪者を処刑し秘密裡に火葬するという行為が目的化した人々の人間としての弱さや葛藤。

効果を最大化させるために行為は目的化され、目の前で起きることへの関心、問いがなくなった時に起きることって、いち個人の裁量を超えて、とんでもない結果を生み出してしまうことの恐ろしさを改めて実感した。

アイヒマンを擁護するつもりは毛頭ないけれど、自分のしている仕事や経済活動がどんな結末にたどり着くのか、大袈裟だけどいつも以上に意識させられる良い映画だった。
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