みむさん

アモーレの最後の夜のみむさんのレビュー・感想・評価

アモーレの最後の夜(2023年製作の映画)
3.5
イタリア映画祭にて。

去年のベルリン見逃し映画。派手さはないが手固くスタイリッシュなクライムスリラー。
「エスコバル」「The Informer 三秒間の死角」が面白かった、俳優としても活躍するアンドレア・ディ・ステファノ監督の3作目。

アモーレは主人公の名前、35年間一度も銃を発砲したことのない警官。
今回のピエルフランチェスコ・ファヴィーノはクールさやアツさよりもちょっとくたびれた感じ、それもまた似合う。
穏和で平和主義という感じの彼だが、退職パーティに現れた時どこかぎこちない。笑顔もどこか不自然で上の空に見えるのは観客も絶対何かあるぞと思って見てるから。
では何があったのか。その一夜を遡る。

世界のマフィアの支所的な組織がミラノにはあると監督が言っていた。今回絡んでくるのは中国マフィアだが、そもそももとを辿れば妻のせいなんじゃないの?(あの妻と結婚してなかったら?と考えてしまうが、愛し合って覚悟もあって結婚したんだろうしまあいいか)
巻き込まれた形になったアモーレさんに同情してしまう。

警察官の経済的事情やマフィアが一般市民レベルに馴染んで生活していることを考えると、一歩踏み間違えると大変なことになってしまうのだなと。
アモーレさんはそんな環境でも善良な警官として真面目に仕事をしてきたのに、年金もらえる手前でそりゃないぜ…な話だったし、悲痛な事件でもあったが、終わりを迎え、普段からの行いが功を奏したともいうかもしれないが、アモーレさんの良心は痛まないのか?とも思った。
その辺の葛藤も含め、模範的な善人が最後にモラルに揺れるドラマ。

面白かった。