壁ノ語

月の壁ノ語のレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
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倫理観の欠落した日本社会だから撮れたんだろうなという糞映画だった。
そもそも全く本質を捉えていないと感じた。この問題の本質は優生思想云々の話ではないのだ。

現政権は社会福祉費、この場合であれば障害者福祉を長年蔑ろにしてきた。その末路がこれだ。

人手不足が深刻で職員は利用者に多くの時間を割けない。個々人へのケアが疎かになり、それに付随して利用者も不穏・問題行動が多発する。現場は悲鳴を上げストレスフルになるが、その解消を休日にしようとも薄給で生活維持に精一杯、余暇を楽しむ余裕などないのだ。ますます職員達のメンタルヘルスは健全さを欠き、その矛先が目の前にいる利用者へと向かってしまう。

そして元来そこに居るはずであった社会福祉士や精神保健福祉士といった障害者支援のエキスパートである専門職員がどんどん辞めてしまっているという悲惨な現実もある。結果、残るのは福祉の勉強など一切してこなかった、金に困ってやってきたバイトや派遣だ。そんなバイトや派遣が、そもそも専門知識がなければ支援するのが困難である重度知的障害者に向き合うことなど出来るはずもない。国がまだ障害者福祉に目を向けていた時代では、現場でも専門知識のない人を求めていなかった。

国の怠慢により、起こるべくして起こった、そのように感じている。

この映画が本質を見誤り、優生思想に焦点を当てようと試みているのであれば、"社会的生き物である人" として吐き気がしてくる思いだ。

追記:対岸の火事なのだろう。対岸の火事の認識のまま撮ってしまったのだろう。ここでいう障害者でなくとも認知症になれば糞尿まみれ等には多々なるし、いつ何時自分が介護される立場になるかも分からない。そうした当事者目線がないからこういう映画が作れるんだろうな。
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