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月のsymaxのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
3.9
"かつてあったことは、これからもあり、
かつて起こったことは、これからも起こる…"

"書けなくなった作家"洋子は、生活のため重度障害者施設で働き始めた…

そこは森の中にひっそりと建つ…そう世間から隠された場所…

徐々に見えてくる施設の本性…そして、徐々に見えてくる自らの本性…

"ここにいる障害者たちは幸せだと思いますか?"


あの事件を真正面から捉えた本作…毒を吐きまくる場面場面に目が釘付けになり、その毒に心がやられてしまう…

宮沢りえをはじめとする全ての演者の熱量が凄まじく、その演技に圧倒されました。

建前と本音をモロに見せられる…後半、洋子はさとくんと話しながら、実は自分自身の本音と対話する演出は秀逸…いびつで危険な考えでありながら、何処か健常者の本音とも言える言葉一つ一つは観客の心を掻きむしる…

兄が障害者である私は、所謂"きょうだい児"…兄がいる障害者施設を訪れる度に複雑な思いを抱いていた事を思い出し、胸が引き裂かれ画面を直視出来なくなってしまいました。

ただ本作の施設はあまりにも暗く、息苦しく、ホラー映画の舞台となりそうな演出はどうかと思いますが…私が知っている施設には、本作のような場所は一つもありませんでしたので…まぁ、怖い思いは何度も経験しましたが…

投げかけられた質問は、劇中にはその答えはなく、観た者がそれぞれ考え、感じて答えを見つけなければなりません…

絶対に観るべき作品ではありますが、もう一度観たいとはならない苦しい作品であります…
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