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月のmitzのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
1.5
2016年に起きた相模原市での障害者施設殺傷事件を題材とした作品。職員による施設内での暴力など、社会が見て見ぬふりをしてきた事実を晒し、同時に勤務するひとりの人物の「正義感」や「使命感」が変容していく過程、そして犯行に及ぶまでの物語です。
磯村勇斗演じる青年の価値観が崩壊し「世の中に障害者はいらない」という優生思想に達するまでの経緯には緊張感があり、また観る側にも出生前診断の是非といった問いが投げ掛けられます。
その縦軸に対して「幼子を亡くした夫婦の再生」というチープな横軸が入り、またそれぞれの登場人物に(親による虐待とかろうあ者の恋人とか)不必要なサイドストーリーが存在し、無駄に多くの情報だけが増えていくため時間経過と比例して本筋がブレ続けます。
そもそも実際の犯人は未だに犯行の正当性を主張しているため、犯行動機を含めた根幹の部分が全てが憶測に過ぎず、かと言ってフィクションと割り切って良い題材でもなく、仮に被害者遺族がこの作品を観ても救われることはありません。

結論として、これは凶悪事件をビジネス化しただけの毒にも薬にもならない酔狂映画です。
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