骨折り損

月の骨折り損のレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
3.3
良さそう、、なんだけどなぁ。

良質感ビンビンに出てたし、個人的にもとても関心のある題材だからこそ、前のめりに見た。しかし期待とは裏腹に鑑賞中、作品に入り込めていない自分に気づいてしまった。正直、最後まで乗り切れなかった。もっと没入して考えがぐちゃぐちゃにされるような体験がしたかった。だが体は正直で、気になる箇所が積み重なる度に、妙に俯瞰で見させられてしまった。

まず、勇気を出して言うが、主演の宮沢りえがどうにもハマらなかった。物語の構造上、この人の演技を浴びせられ続ける2時間半だからこそ、この人の演技が抜群でないと成立しない。しかし、僕にはこの人の演技こそが最大のノイズになってしまった。主人公が感情を激しく発露するシーンが多く出てくるのだが、そのどれもが下手な演劇のような大袈裟な台詞の読み方、鼻にかかった発声で、どうにも不自然に思えた。台詞が台詞として直接こちらに届けられていて、このキャラクターの言葉には思いづらかった。

そして主演の演技が気になり始めると、やはり他の演者たちも冷静に見てしまい、そうなると全てが嘘っぽく見えて非常に勿体なかった。演者に嘘が見えると、台詞にも嘘が見えて、そのマインドになってからの後半の台詞合戦は作為的なもの(作者の直接的な言葉)にしか思えず、完全に作品世界から出てしまった自分がいた。

企画意図も、捉えようとしていたテーマも、非常に共感できるし、これを一本の映画として成立させ世に出したこと自体が素晴らしい。しかし、それを届ける為の演技やカメラワークを含むその演出がこちらに響かないものになってしまったのは悔しいとさえ感じてしまった。
骨折り損

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