このレビューはネタバレを含みます
今年の日本映画は『福田村事件』と本作の年、となりそうなので、遅くなりましたが鑑賞しました。
これはまたレビューの難しい映画です。
この題材に挑戦して映画にする事は非常に大きな意味と意義を感じさせます。
すごい映画だと思う瞬間もあります。
しかし、この描き方、描写、構成で良いのか？という疑問は映画を観ながら考えてしまいました。
施設の描き方はあまりにも偏ったもので、かえって差別を助長しないかと心配になるほど。
それが物語に説得力を持っていくか？というとそういうことでもなく…。
物語があっち行ったりこっちに行ったりします。
多角的に捉えられるのではないかと思いましたが、人間は常に自分より下を作り、迫害してしまう邪の面を描きたい、という事もあるでしょう。
現代社会の狂気を描く事もあるでしょう。
社会構造そのものを批判する事もあるでしょう。
それが優劣をつけてしまう事があり、施設のあまりにも偏った描き方がかえってきてしまいます。
そして『福田村事件』と全く同じ問題で、殺害シーンは全てフレームの外で行われます。
戦争映画がどんなに反戦でもスペクタクルになってしまうため、直接描写しないのもあるでしょう。
しかし、本作のような現場にはカメラが入りつつ、映さないというのが、「なかったこと」になってはしないかと思ってしまいます。
障がい者への虐待を描いた忘れがたい作品は『トガニ』がありますが、あそこまでの掘り下げ方や告発性を感じる事は出来ませんでした。
おそらく、ラストシーンを観てもこの事件に対する評価をこの映画の目的には置いていないからでしょう。
ジャーナリスティックな映画としては物足りないものを感じてしまいましたね。
