ぬ

月のぬのネタバレレビュー・内容・結末

(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

何回も、もう観れないかもって思うくらいきつかった。

洋子が自分自身に問い詰められているシーンでは、観てる自分が問い詰められてた。自分の本音と思ってた部分は本音じゃなくて建前で、心の底で思ってたことが暴かれたというか、気付かされた。

人を傷つけてはいけないことに変わりはない。でも物理的ではなくても、間接的に傷つけているのではないか。「差別をしてはいけない」と分かっていながら、やっぱり差別しているのではないか。
現実を見ていないのがよく分かった。自分を含め世の中全体。

最後まで、みんな現実を見てなかった。向き合ってなかった。目の前の人、コトに。見てそうで、見てなかった。
「これは見ちゃだめだ」と言って、現実から目を背けた2人のよう子がいたけれど、スクリーンいっぱいに彼の目が映った時、私も見れなかった。まっすぐ見てたのは、さとくんだけだった。
まっすぐ向き合ったけど、さとくんが出した答えは間違っていて、それは向き合わなかった周りの人間も、さとくんが出した答えの理由の1つになっていて。

洋子が園長にさと君のことを報告した時、障害者を殺すなんて「冗談なのに」と園長は笑っていたことに苛立った。
だけど、その後、昌平と洋子は「そんなこと起きないよね」って自分たちに言い聞かせてた。園長と同じようなことを言っているのに、その気持ちは分かってしまった。信じたくないし、そんな現実向き合いたくない。彼らには彼らの問題を抱えているし、他のことにまで向き合えない。

相模原の事件が起きたとき、高校生だった私は部活で忙しかったのを理由に、ニュースで見る程度で事件について深く調べず、月日が経ち今日まで来てしまった。その事に今回気付かされたし、これが私の事実である。
東日本大震災の事も、時間が経てば忘れられてしまうし、それはどの震災どの事件にも当てはまると思う。
目を背けたくなってしまうような、正常でいられる方が異常のような現実にも向き合わなければいけないと思う。

歌が耳に残る。

色んな照明が印象的に使われていたり、画面が斜めになったり、急にズームしたり、イマジナリーライン越えてたり、アニメーション使われてたり、「頑張れ」のセリフがあったり、内容も技法も石井さんの映画だった。
ぬ