ankyh321

月のankyh321のレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
4.0
昨年公開された時には、見れなくて、再上映されていて見に行きました。宮沢りえと磯村優斗メインですご、同僚に二階堂ふみ。夫役にオダギリジョーと役者揃いでした。
石井裕也監督、脚本作品。とても重いストーリーでした。
かつては小説で賞を取った洋子(宮沢りえ)と、夫で売れないアニメーター(オダギリジョー)
最愛の息子を亡くして、小説が書けなくなる。
重度の障害者施設で非常勤として働く中で、同僚の陽子(二階堂ふみ)やサトくん(磯村優斗)と出会う。
2人は話もできて、まともな感じかと思いきや、それぞれに抱える闇の部分。
そして意思疎通ができない(難しい)障害者をケアしながらも、自分自身の精神をまともに維持していくためには、多少の虐待や暴力も否めない。そういうことをしている職員に対して、嫌悪感を抱きつつもどうすることもできない。
そのうち、サトくんがどこかで『会話のできない人は人間じゃない』という履き違えた正義や倫理観を持ち始め、最後は殺人を強行する。
以前は献身的に介護をしていて、得意な絵画で紙芝居を制作して見せてあげるのに、職場の先輩からバカにされ、むげにされ、自分のやってることは何なのか?自問自答する。
破られた紙芝居を『月』の形に切って、患者の病室の壁に貼ってあげる優しい側面もあったのに。
職場の同僚が『あいつは学校の美術教師とかになってればよかった』それならこんな風にならなかったと、話すシーン。
それほどまでに精神を追いやられる、障害者の介護は本人たちの問題だけではないし、それは老人介護やワンオペ業務にも当てはまり、誰しもそんな境遇に追いやられたら、おかしくなってしまっても仕方ないと思うが、その一線を超えてしまう線はどこにあるのか?
サトくん(磯村優斗)の移り変わりばかりフォーカスしましたが、宮沢りえとオダギリジョーの夫婦の形も独特で、最終的には洋子は小説を描き始め、夫は小さいながらも賞をもらう。2人で乗り越えていこうという、前向きな方向をあゆむ決断をしています。
深い映画でした。
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