AK

月のAKのネタバレレビュー・内容・結末

(2023年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

終わってからの映画館の空気の異様さ、観ている皆んなに突きつけられてるような雰囲気で初めての感覚だった

ひとって、こころって、いのちって何なのかを考えるきっかけになると思った

優生思想は大学の頃講義の中で勉強したことがあったから、どういうものなのか理解している部分があるけれど、この作品の中で、さとくんが自分自身に問いかけて来てるような気がして、心がギュッとなる感覚があった

ギュッとなるという事は、自分にもそういった感覚や価値観が100%ないということでは無いのか?分かる部分があるってことなんか?て、不安になるような感覚もあった

さとくんの行動自体、考え方自体、極端だなと思う反面、素直すぎると言うか、考えているようで考えきれていないというか、無責任な事は言えないけど、そんな感覚があった

自身が要らないものは社会の要らないものであると言うさとくんの感覚には1ミリも同意できなかった
排除するという思考

これは障害者施設だけに限らず、老人ホーム、会社、学校、色んな場面でも置き換えることができると思う

そう言う社会の中での問題提起としてのメッセージ性が強烈な作品だと思った

今まで深く考えてこなかったこと、知っているけれど考えなかったところ、いろんな場所での現実、実態、もちろん映画という作品の中での事ではあるけれど、現実世界でもこういった環境があって場所があってと容易に想像できたし、難しいことだなと、1人で抱え込んだり考え込んだりするにはかなりエネルギーが必要な問題だなと思った

お腹に命が宿った段階で、コミュニケーションが取れない赤ちゃんだと知って堕す事と、重度障害のコミュニケーションが取れない人たちを殺す事は本当に全く同じ事なのだろうかとか、すぐに答えを出すには、1人で答えを出すには、あまりにも大きな問題というか、事柄だなと感じた

自分は違う事だと思うけれど、人それぞれでその考え方は変わってくるものだと思う

明確な答えは無いのかなと思う

4人での宅飲みでのシーンの空気感、二階堂ふみが酔っ払いながらした発言を聞いて、それ言ったらあかん事!って映画館の中の人たち皆んながそんな空気感になっていて、息が止まっているというか、はっ!!と映画館中がなっている感覚があって、画面を通して空間を制圧する空気感を作れる演技力、撮影スタッフ、編集、凄すぎるなと思った

磯村勇斗の演技力も凄いなと思った
周りに持っていかれず、優生思想を貫く、でもしっかりと相手の意見は受ける、そのブレない感じというか、謎な感じというか危うさが途中から凄く演技の中から匂ってきて凄いなと思った

さとくんがさとくん自身を見ているところ、洋子が洋子自身と話している、自問自答するところ、すごく迫力があった

この映画を観て自問自答をしてみてほしいというような意図に感じた

ラストのオダギリジョーと宮沢りえの掛け合いのシーンも何か引っかかる部分があった
洋子に対して昌平は、洋子と息子大好きだよと言うのに対して、洋子は昌平のことしか言わなかったところ
そこでバンっと一気に終わるところ

すごくなんか良い意味での気持ち悪さがあったラストだった
その後いろんな想像ができるラスト
そして問題を突きつけられ、考えさせられるラスト

もちろん人間にも命がある
犬にも猫にも動物にも
虫にも
虫は殺して犯罪にならない、罪にならない
犬猫動物は犯罪になる
命という括りでみると同じ命
この線引きはどこなのか、人間にとって害が有るのか無いのかで決まっているのか
でも人間中心で考えると猫アレルギーなどの動物性のアレルギーを持つ人もいる、害と言えば害になっているけれど、排除したとすれば罪になる
この線引きは何なのか
声をあげてそれは犯罪行為だと声を上げる人が増えれば、犯罪になるのか
そういう団体があるからこそ犯罪になるのか
罪にならない国も有る、食糧としている国もある

これが人間世界だけの中で起きているという事
命を奪うということだけではなく、この排除するという考え方自体が今作品では罪に触れる部分だったけれど、罪には触れない段階での排除する行動だったり、仕組みだったり、社会だったり、現実世界では人間世界の中では法に触れない排除が多く有るんだよ、ということなのかなと思った

説明を言葉にするのが難しい

この線引き自体、皆んなの中にはどういう線引きがあるのか、無いのか、そういったことを突きつけてくる作品だった
AK

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