地底獣国

ダム・マネー ウォール街を狙え!の地底獣国のネタバレレビュー・内容・結末

3.6

このレビューはネタバレを含みます

つい2週間ほど前までゲームストップ株の事など全く知らず、観る直前に「株の乱高下についてSECが調査に入り、公聴会が開かれた」という予備知識だけ入れての鑑賞。

起きた事象それ自体が面白い一方で演出についてはあまりパッとしない感じだったが、登場人物とイベントを手際良く見せていくことに徹した結果かもしれん。

一方本作の大きな魅力となっているのがキャスティングの妙。

なんせポール・ダノといえば、撲殺されたり、拉致監禁されてフルボッコにされたり、死体と一緒にサバイバル生活したり、精神病院でバリー・キオガンに目をつけられたり、自由すぎる妻に振り回されたりと、何らかの災難に遭わない役って片手の指で足りそうなイメージなんで、劇中株価が急落したり公聴会呼ばれたりするたびに「これヤバくね?」ってハラハラすることに。もし演じたのがもっとキース本人に似てる役者だったらここまで気を揉む事にはならんかったやろな。

それから本作のメインヴィラン?ゲイブ・プロトキン役のセス・ローゲン、「フェイブルマンズ」ではダノ(演じるバート)の女房を寝取る男の役だったが、今回は女房に頭が上がらんし、ビリオネアなのに全然幸せそうじゃないという「クソ野郎だけど憐れみを覚えてしまう」人物を絶妙な塩梅で演じている。

あと、バッキーじゃない時は大体胡散臭い奴かクズかということの多いセバスチャン・スタンも期待通りの胡散臭いクズっぷりだったし、ビンセント・ドノフリオの「気の抜けたキングピン」感も良き。デイン・デハーンはどこに出てたんだ?

決してハッピーエンドではないにしても少しばかり溜飲下がって、世の中ちょっとマシになりました‥という締めもなかなか良い味わい。思い返してみれば「マネーショート」って空売りで儲けた奴らの話だった訳で、気持ち的にはこちらの方に肩入れしてしまうな。


余談その1:「キースが公の場から姿を消した」事について柳下毅一郎氏は「コッソリ株売ってるんじゃない?」と言ってた(劇中にもそう思わせるシーンはある)が、自分としては彼の身に何かあったんじゃないかと気になってしまう(これもダノ効果?)。

その2:これも柳下氏の解説で知ったんだがこの映画の製作には「ソーシャル・ネットワーク」でお馴染みのウィンクルボス兄弟が設立した会社が噛んでるそうな(二人はエグゼクティブプロデューサーに名を連ねている)。この、ジョン・シナを縦に引き伸ばしたような顔した兄弟、Facebookを訴えて手にした金ウン千万$を元手に仮想通貨ビジネスを始めてボロ儲けして、その事を映画化しようと目論んでるような奴らだったりする。そういった事を知ると本作、“あっち側”の人間が「お前らこういう話好きだろう?」ってな感じで作った映画なのかとも思えてきて、手放しでは楽しめないなぁ。
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