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国葬の日のmegurosのネタバレレビュー・内容・結末

国葬の日(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

公開初日に鑑賞。劇場にいらしていた大島監督からは、『なぜ君は総理大臣になれないのか』そして『香川1区』にて選挙における候補者を映してきたが、有権者の側に興味を持つようになり、今作では日本人論にアプローチしているとの話が。

映画では国葬賛成派、反対派それぞれの考えや立場が語られていく。賛成派からその根拠として挙げられるのは、メディアを通じて得られた安倍晋三の人柄の印象、そして在任期間が長いといった話で、根拠は驚くほどに希薄。戦後知識人が見出した日本人論でも語られる空虚な日本人の姿がそこにはあった。

監督自身は反対派であるとのことだったが、反対派や、リベラル派の声が(特に若い人に)届かないという課題も浮き彫りに。『REVOLUTION+』の足立監督や作家の落合恵子氏の話を聞いても、賛成派の方々との溝は埋まることは恐らくないだろうと感じる。

映画では”国葬の日=国民分断の象徴となる日”という視点が数ある視点の一つとして提示されていたが、何も変わっていない/変わらなかったという感覚が個人的には強い。映画最後には献花に集まった人の数、デモに加わった人の数、そして国民の人口が示されるが、この圧倒的な無関心こそ空っぽな日本人の恐ろしさである(沖縄の女性が、東京でデモをしている人たちも1週間もすればまた元の日常に戻るという話をされていた通り...)。

台風15号によって深刻な被害が出た清水区において災害ボランティアをしていた清水東高校サッカー部のメンバーがこの映画唯一の救いで、この国に残ったかすかな光のようにも感じられた。
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