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国葬の日の教授のレビュー・感想・評価

国葬の日(2023年製作の映画)
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僕個人のパーソナルな話なので、アレなのだが、つくづく「日本国民」が嫌になるドキュメンタリー作品。

「安倍晋三」という元内閣総理大臣を、嫌悪している自分にとって、微かにでも「崇拝」している姿を見ると落ち着かない。
本作で取り扱われている「国葬儀」を「今更反対しても仕方ない」だの「あれだけ長く務めた」だの「たくさんの成果を収めた(特に外交)」だの、宣う「国民」のぼんやりした姿。

大島新監督の「香川1区」でも触れられた「なぜ日本人は自民党に投票し続けるのか?」ということで浮かび上がる日本人の姿。
国民ひとりひとりの言葉の中にある、言い訳として注釈のつく「政治のことはよくわからないけれど…」の枕詞。
主権たる「国民」がよくわからないままその功績を「評価」している様。

一方で、敵意や憎悪も含めて安倍晋三、自民党、あるいは日本の国家に対して怒り「国葬」に反対するいわゆる「左翼」と呼ばれる人たち。
そして震災や水害あるいは国策によって支援を求めても裏切られ、あるいは国策によって郷土を蹂躙される人たちの視点。

それらによってただただ「分断」していくだけの日本の姿。
作中の数少ない大島新監督の発言の中に、彼が思うのはきっと、その「分断」への苦悩だと思う。
そこは、この国のあり方を思う時に「右も左も信用ならない、何より国民の無関心はより深刻」という「どうしようもない」姿が深く浮かび上がる。

作中で、きっと一番エモーショナルで、感動的なボランティアの高校生が、お礼とした受け取った一万円を「これでラーメンなんて食べられないですよ、こっそり募金します」と困惑しながら笑うその姿が、普遍的な日本人の「心やさしさ」なのだろう。
その微かな美しさは存在するけれど、そこに接続しない現実に暗澹たる気持ちになった。

全てが曖昧に映る映像の羅列の中に、確かにはっきりと現在の日本の姿が映し出されている。
ドキュメンタリー「映画」としてはちゃんと観応えを感じる作品。
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