てっちゃん

国葬の日のてっちゃんのレビュー・感想・評価

国葬の日(2023年製作の映画)
4.1
シネマテーク亡き今、名古屋のミニシアター文化を牽引するのは、シネマスコーレだと思っていたのですが、シネマテークが大好きで大切すぎたので、なかなか足が向かなかったというのも正直なところ。

それでも、本作をシネマスコーレで上映する意味を考えたら、これは観に行くしかないでしょう。
しかも大島監督さんが舞台挨拶される上映初日に。

ということで、混み合うだろうなと思って上映45分前くらいに着いたのですが、行列ができておりました。
そうだよな混むよなと思いながら並んでいると、結局チケット購入したのは、上映5分前!
危ねえ、危ねえと思いながら、席だけ取って御手洗いに向かい、上映後にサイン会してくれると思って早めにパンフ購入して、上映開始です。

最初に言っておくと、私は国葬に反対でした。
なので当然そのような目線で本作を観ることになることは覚悟しておりましたし、大島監督さんの立場からしても、そのような目線で描かれるのだろうなと思っていました。
ドキュメンタリー作品って、少なからずそのような偏りはあるものですよね。

これを書く前に上映後の大島監督さんの舞台挨拶内容を箇条書きで記していきます。

・もやもやした作品だったでしょうと、まずは一言。
これまでは政治家が主人公の映画が多かったが、徐々に政治家そのものよりも、有権者に関心が移ったとのこと。
そして、世論調査に関心が移っていった。
安倍晋三の退陣前と退陣発表後の支持率は15ポイントも差が出た(上がった)という経緯があったことに興味を持ったとのこと。

・一日で撮影し終わると決めていた。
しかもいろんな箇所を。
そうすることで、日本というグラデーションがとれると思ったとのこと。

・インタビューしていても、曖昧な回答をしている方が多い印象だった。
どちらかといえばという意見が多く、それはそもそもの関心がないということを現すのではないか。
大統領と呼ぶ若者には、そうだよなと思ったと同時に、そのときの雰囲気に合わせているように感じた。

・見た人の解釈に委ねようと本作を制作したとのこと。

・シネマスコーレ代表の木全さんと大島監督さんとの印象に残った対話を紹介します。

木全さん:10箇所の選んだ基準は?
大島さん:東京、山口、奈良は決定していた。
で、沖縄、福島が次に決まった感じ。
木全さん:清水の水害のシーン、監督自身も忘れられないものではないですか?
大島さん:そうですね。
カメラマンは、ネツゲン班で3人、残りはフリーのカメラマンにお願いした。しかも数日前とかに。
いろんな人を撮って欲しい、いろんな声を拾ってきてほしい、日常を大事にして欲しいと伝えてフリーのカメラマン(取材班)に伝えた。

さらに舞台挨拶で大島監督さんの気になった言葉について。

・ドキュメンタリーだけどひいた視点で撮りたかった。これまでの作品は被写体と距離が近かったので。スケッチみたいな感じにしたかった。

・福島のあの家は狙っていったところだったとのこと。
原発から20キロ圏外のぎりぎりの立地ということ(補償額がこの20キロで変わる)、キャラもいいから、とのこと。

・足立監督のレボリューションは狙っていたとのこと。

・清水のシーンついて
ドキュメンタリーの神様がおりてきた瞬間だったとのこと。ラーメン屋に行かないでと思っていたみたい。
行くなよ、行くなよみたいな感じで。

当日はネツゲンの前田さんも劇場に来られていて、なんと選挙亭漫遊師匠こと畠山さんのドキュメンタリー映画が近日公開されるとのこと。
しかもシネマスコーレでやってくれるんだって。
これは観に行かないと。

ちなみに、サインを無事に頂けて(大島さんと前田さんに!)、ヒルカラナンデス繋がりで知ったことなどお伝えしたら、そのような客層は多そうな感じでした。

さて、本作を観て自分はなにを思ったか?なのですが、これは本作をいつ観るのかによって変わってくるのかと思いました。
なので今現在の自分の目線で本作を語らせてもらいます。

1番最初に思ったことは、この国は"無関心"でいることに慣れてしまっている。と思いました。
無関心の積み重ね、その数が増えていくことによって、今の日本ができているのは明らかです。

今の日本とは?
将来のことなぞ何も考えないで、今の自分たちが如何にして長く政権に居座り続けられるのか、党内での揉め事を減らして自分の面子を保つのか、一部の仲の良い"ともだち"とよろしくやるのか。

つまりは、国民は馬鹿にされているんです。
すぐに忘れると思われているんです。
だってあれだけ騒がれた国葬(じゃないなにかだと思っておりますが)が、もう忘れ去られようとしてますよね。

終わってから検証しますと訳分からんこと言ってましたが、"丁寧"な説明はありましたか。
一度決めたことは何が何でも反対の声が多くても、ちゃんとしたプロセスを踏んでない状態でやって、あとは、はい!終わりましたね!よかったでしょ!状態ですよね。
これ国葬じゃなくて、東京五輪もそうでしたよね。で、間違いなく大阪万博もそうなります。

お上の言うことは絶対であると、何も疑問に思わないんです。
それは誰が決めたのか、誰がなんの意図で決めたのかを説明されないまま、"ルール"を決められてただ従っている今。
つまりは何も考えないと思われているのです。

そんな日本の現状を本作は捉えているなと感じました。
見せかけだけを気にしているそんな日本の現状です。
インタビューに答えている人は、それぞれな意見がありましたね。

でもその多くは、何も考えていないように感じてしまう、今を生きることに必死、飼い慣らされたメディア情報だけしか伝わっていない、情に流されやすい(いいこともありますが、本作では故人の悪口を言うものではないという感じ)印象を受けました。

だからこそ、私も清水のサッカー部の方達と女性とのふれあいはすごくいいなと思ったんです。
困っている人がいたら助ける、助け合う。
社会がよくなる。
暮らしやすい世の中になる。
この役目をやるのが政治だと思うんです。

国葬当日、私はいつものように仕事をしていました。
知人は武道館にまで行くと嬉々として語っていました。
私はとても心に蠢くなにかに気づきながら、押し殺して仕事をしていました。

あの日にあったこと、経緯、それからのこと。
忘れてはいけないと思った作品でした。
てっちゃん

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