Jimmy

妻の心のJimmyのレビュー・感想・評価

妻の心(1956年製作の映画)
3.5
川本三郎さんの著書『成瀬巳喜男 映画の面影』なる本を読んでから、成瀬巳喜男監督作品を観る気持ちが変わってしまった気がする。
「具体的な金額を明示しながら、常に金の話が出てくる」という川本氏の指摘が気になる。
この映画も、具体的な金の話が多々出てくる。

高峰秀子と小林桂樹が夫婦であり、パッとしない代々続いている薬屋を継いでいるが、喫茶店を空地に作ろうと、金の工面をしたりしている。
そこに、かつて勝手に家を飛び出した兄(千秋実)の一家3人が戻って来た。兄が東京の会社をクビになったのかと思っていたら、会社が倒産したらしい。
会社つぶれて金が要る、という金銭問題が重なる。

この映画には、三船敏郎も出演しているが、安心して観ていられるのは、三船登場シーンぐらい。
なぜかと言うと、金の問題が出てこないから。

途中、高峰秀子と三船敏郎が突然の豪雨で帰れなくなる場面は、溝口健二監督の『武蔵野夫人』の狭山湖シークエンスを思い出すが、やはり安心して観ていられる。

本当に悪い事ばかり起こる物語で、気持ちが暗くなる映画であったが、それでも何故か心に残る作品だった。
Jimmy

Jimmy