小林桂樹の旦那や突如実家に戻ってきた小林の兄の千秋実の二人が情けなさや優柔不断ぶりを発揮すればするほど家庭に縛られる主婦高峰秀子の息苦しさが伝わり、同時に意中の人である三船敏郎の二枚目ぶりが一際輝いてくる。いつものずぼらさやダメっぷりはさほどないけど、少し暮らしの作法が違うため同居する高峰の生活の歯車を微妙に狂わせる千秋の奥さん中北千枝子のサポートも見事。
三船と高峰の関係がいいところまで発展したのに一線を越えないまま映画が終わるので少しモヤモヤするが、そこまでいくと家庭劇をはみ出して本当のメロドラマになってしまうので仕方ないか。と同時に倫理観を踏み外せないところに成瀬巳喜男監督の限界も垣間見る。
でも侍やアウトローを演じる三船敏郎も良いけど、こういうイケメンキャラの三船も颯爽としていて良いかも。成瀬作品とはあまり合っていない感じがするのだけど、その分地である紳士っぷりやシャイな一面がにじみ出ていてほほえましい。
あと土屋嘉男がワンシーンだけど美味しい役で出ていて印象に残る。
