KingKazukiManji

我が人生最悪の時 4K デジタルリマスター版のKingKazukiManjiのレビュー・感想・評価

5.0
めちゃくちゃ面白かったな。リバイバル上映している時に観れなかったことが後悔でしかない。

イマイチ格好がつかない主人公というのも、感情移入がしやすく、簡単に心を掴まされた。

林海象による演出のクセが強くて驚かされた。役者の誇張したような大袈裟な芝居や、敢えてオマージュしたであろう古い演出群、そして観づらいモノクロ映像と、首を傾げざるをえなかった。

しかしながら30分くらい観ていたら、いつの間にか世界観に惹き込まれていて、気がついたらこの演出群にハマっていた。不思議な気分だったが、脳がこの演出群を求めるような、まさに麻薬のような映画だった。

昭和をオマージュした平成の映画というのも面白いが、それを令和でリマスターするというのが素晴らしかった。

何年も社会の底辺で暮らしていたという監督の、映像畑とは全く異なる角度からのアプローチというのが、とても面白く、これは林海象じゃなきゃ作れない唯一無二の強みになっている。

社会のはみ出し者の美学という点でも、ここまでリアリティのあるものは描けないだろうが、随所に入るメタ的な演出だったり、エンタメに振っていない脚本が凄い力を持っている。

この脚本ならこのタイトルも納得なんだよな。

我等が生涯最高の時に逆張りしたような、我が人生最悪の時っていうタイトルが最高にシビれる。私立探偵濱マイクシリーズは、タイトルがどれも素晴らしい。あまりシリーズものとしての側面を入れるではなく、単作として取れるような映画作りが良いなと思う。

またマイクをある所まで、監督と重ね合わせて観ることができ、それがまたリアリティあって良かった。
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