めちゃくちゃ面白かったな。リバイバル上映している時に観れなかったことが後悔でしかない。
イマイチ格好がつかない主人公というのも、感情移入がしやすく、簡単に心を掴まされた。
林海象による演出のクセが強くて驚かされた。役者の誇張したような大袈裟な芝居や、敢えてオマージュしたであろう古い演出群、そして観づらいモノクロ映像と、首を傾げざるをえなかった。
しかしながら30分くらい観ていたら、いつの間にか世界観に惹き込まれていて、気がついたらこの演出群にハマっていた。不思議な気分だったが、脳がこの演出群を求めるような、まさに麻薬のような映画だった。
昭和をオマージュした平成の映画というのも面白いが、それを令和でリマスターするというのが素晴らしかった。
何年も社会の底辺で暮らしていたという監督の、映像畑とは全く異なる角度からのアプローチというのが、とても面白く、これは林海象じゃなきゃ作れない唯一無二の強みになっている。
社会のはみ出し者の美学という点でも、ここまでリアリティのあるものは描けないだろうが、随所に入るメタ的な演出だったり、エンタメに振っていない脚本が凄い力を持っている。
この脚本ならこのタイトルも納得なんだよな。
我等が生涯最高の時に逆張りしたような、我が人生最悪の時っていうタイトルが最高にシビれる。私立探偵濱マイクシリーズは、タイトルがどれも素晴らしい。あまりシリーズものとしての側面を入れるではなく、単作として取れるような映画作りが良いなと思う。
またマイクをある所まで、監督と重ね合わせて観ることができ、それがまたリアリティあって良かった。